運用の負担を軽減することがHerokuの最大の強み

Quipperの長永健介氏

次に登壇した長永氏の所属するQuipperは、モバイル領域で学習プラットフォームを提供しているスタートアップ開発会社だ。英国ロンドンが本社で、東京とニューヨークにスタッフが常駐しておりアジア諸国への営業も積極的に行っているという。

国内ではKDDIと共同で中高生向けの学習サービス「GAKUMO」を2013年7月から開発・提供している。また主にフィリピンでは、学校の先生をメインターゲットとして提供している学習サービス「Quipper School」を提供している。

「Quipperでは、3つの機能を軸として各種サービスを展開しています。1つは教材・コンテンツを作るCMS、2つ目は実際に学習をするためのアプリケーション、3つ目は学習状況をモニタリングするユーザー管理機能です」

Quipperのサービスのポイントは、世界各国で同じシステムを提供しながら各国ごとにブランディングを行っているという点である。例えばアジア向けの「Quipper School」とまったく同じ機能が、北米ではStraight Aceというブランドで展開している。

実際の運用面で考えれば、ブランドごとに本番環境だけでなくそれぞれテスト用、ステージング、デモ用など、数多くの環境・アプリケーションが必要となり、それぞれ正しく稼働させなければならない。

「Herokuの最大の利点は、運用の負担が非常に小さいことです。サーバのセットアップや死活監視、アプリケーションの設定、スケールアウトが容易で、機能追加も豊富なアドオンですぐに実現できます」

またQuipperではパフォーマンス監視やメール配信などの基本的なアドオンをいくつか活用しているという。

「ただ、あえてアドオンを活用していない部分もあります。例えばデータベースは別途Mongo DBを契約して使っています。アドオンはアプリケーションごとに付与するものであるため、共用すべきデータベースには向かないのです」

Herokuに大満足の長永氏だが、不安も少しあるという。

「環境変数に依存しすぎるのは、正しい値を知らないと動かせないというリスクが生じると思います。Herokuが便利すぎて自分がガラパゴス化してしまうのではという不安もあります。また無料枠はありますが、個人向けにはちょっと高いかなという思いもありますね。ただ実のところ、不満はあまりないです」

どんどん使ってどんどん便利に

Herokuは、もはや単なるテストや勉強の場ではなく、ベンチャーから大企業まで、多くのスタートアップサービスを支えるプラットフォームである。インフラを一任できるため、サービス開発に集中できることが最大の強みだ。

相澤氏が述べるように、私たちがHerokuを活用することが、Herokuをより便利なものにすることに繋がる。積極的に利用して、私たちの"Heroku"を育てよう。