オープンソースの監視ソリューション「Zabbix」は、リリース元であるZabbix SIA(ラトビア)の対応力と、日本支社Zabbix Japanによる手厚いサポート体制で、国内でも注目を集めている。

11月22日、東京にて開催された「Zabbix Conference Japan 2013」では、Zabbix社のオフィシャルパートナーとして、「Zabbix」ベースの監視ソリューションや関連システムを開発・提供している企業が、これまでの成功事例や新製品を携えて集合、そのメリットを語った。

負担、コストを減らし、収益にもつながる
-クロス・ヘッド

クロス・ヘッド ソリューション事業部
BPO技術統括部 統括部長 宮本 雅夫氏

顧客向けにネットワークサービスを提供しているクロス・ヘッドはまず、自社の課題をZabbixの導入で解決した事例を紹介した。

同社は顧客に商用監視サービスを提供しているが、事業が拡大する中で、「Nagios」「Cacti」など、異なる監視ツールを使うシチュエーションが増えてきていた。それぞれ操作方法が違う上、顧客に合わせた作り込みなども多数行われ、最終的には特定の担当者しかサポートできない状態、つまり人依存の状態に陥ってしまった。

これを解消するために導入したのが「Zabbix」だった。監視ツールを、テンプレート機能やWeb GUIが充実した「Zabbix」に統一することで、運用作業はシンプルになり、人依存から脱却できた。新規顧客向けの監視サービスも短期間に用意できるようになり、会社としての利益も増大したという。

他にも、それまで商用の監視ツールを利用し、その高額な保守コストに悩まされていた顧客や、他のシステムとの連携に苦労していた顧客、さらには独自開発した監視ツールの操作性の悪さに悩んでいた顧客に、「Zabbix」の利用を勧め、コストの削減、運用負荷の軽減に貢献した事例が紹介された。

「『Zabbix』導入を成功させるには、監視設計、運用フローの見直しなどのポイントがありますが、解決の近道は構築実績の豊富なZabbix認定パートナーに相談することでしょう」(宮本氏)

クラウド運用における「Zabbix」の活用
-インテリジェンス ビジネスソリューションズ

インテリジェンス ビジネスソリューションズ OSSテクノロジーグループ責任者
小坂 剛人氏

システムインテグレーターとして事業を展開しているインテリジェンス ビジネスソリューションズは、クラウド基盤の監視・運用について、

「『Zabbix』を用いてクラウド環境のリソース情報、障害状況を把握した上で、それをどうやって活用していくのか、ということを考えなければならない」(小坂氏)と語った。 その回答のひとつとして、クラウド構築・運用に「CloudStack」、その監視に「Zabbix」、そして同社が無償で提供している「incident manager」を利用する、という構成を紹介した。

顧客がクラウドを利用する中で、障害が発生すれば「Zabbix」で検知し、運用担当者は対応に動くことになる。ここまでは従来の流れだが、「incident manager」を組み込んでおけば、その対応状況をデータとして記録しておくことができる。

ネットワーク上で、トラブルをはじめとする何らかの事象が発生した時々に、担当者がそれぞれの考えに基づいた対応をするのではなく、まず「incident manager」に蓄積された過去の対応記録を探し、類似したケースの事例を参考にすればいい。管理者にとっても簡単に事象の管理ができるだけでなく、全体の状況を俯瞰的に見られるため、幅広い情報収集、分析に役立つ。

「Zabbix」と「incident manager」によってナレッジ活用が進めば、運用・管理に携わる人々の負担や対応ミスは大幅に減少するだろう。

「incident manager」は、無償にて配布しているのでぜひご活用頂きたい。

「Zabbix」アプライアンス製品で、手間と無駄を省く
-ぷらっとホーム

ぷらっとホーム 営業部
パートナーSE担当部長 白水 道成氏

小型・計量・省電力のマイクロサーバー「OpenBlocks」の開発で知られるぷらっとホームからは、「Zabbix」搭載の超小型アプライアンス(特定用途に特化した機器)・サーバーが紹介された。

企業内で出てくる様々な要望、例えば「VPNを導入したい」「Webコンテンツのフィルタリングをしたい」「システムを監視したい」などに対し、システム担当者は、時に煩雑で費用対効果が薄い作業に翻弄されることがある。仮にアプライアンスでこれを解決しようとしても、費用が高く、不要な機能まで搭載されているケースがあった。

一方、 「Zabbix」アプライアンスは、サーバー構築やセットアップ、ソフトウェアのインストールや初期設定などの作業を行うことなく、電源を入れ、機器のハードウェア設定を行うだけで、システム監視、障害通知、グラフ表示など「Zabbix」の全機能を活用できるようになる。 ハードは構造を単純化し、故障要因となるディスクやファンを排除、スリットのない底面廃熱構造で、狭い場所、ほこりっぽい場所でも安心して利用できる。CPUにはエネルギー効率の高いARMを採用し、大幅な消費電力削減が可能となっている。

システム担当者、販売会社にとっては、安価で手離れが良く、提案しやすい製品と言えそうだ。

オープンソースであることの魅力
-オージス総研

オージス総研 サービス事業本部
テミストラクトソリューション部
部長補佐 八幡 孝氏

システム開発、プラットフォームサービスを手がけるオージス総研からは、「宅ふぁいる便」の初期開発にも携わった八幡氏が登壇、ものづくりの現場を歩んできた自らの経歴をまじえながら、そこで実感したオープンソースソフトウェア(OSS)の魅力について語った。 「『Zabbix』もそうですが、OSSは簡単にインストールできること、簡単に使い始められること、商用製品に比べ柔軟で、標準技術が使えること、ソースが公開されているので、しっかりと使い込めること、そして自分でコードを書いて“ちょい足し”ができること、それらを通して、自分の力で、自分がやりたいことの実現に近づける。これが魅力なんです」

八幡氏の考えを反映するように、オージス総研が提供しているOSS活用ITソリューション「ThemiStruct(テミストラクト)」のサポート体制には、システム構築を同社が一手に引き受ける「SIサービス」の他に、顧客が自らのニーズを実現するために、同社が技術の検証や支援までを行う「プロフェッショナルサービス」、そして利用方法や、障害時の調査・復旧支援だけに特化した「サポートサービス」がある。

サービスの活用事例として紹介されたある製造業者は、「プロフェッショナルサービス」「サポートサービス」を併用しながら、商用の監視システムを「Zabbix」に置き換える作業の殆どを自社で行い、保守コストの削減と、オペレータの負荷低減を実現に成功したという。

「『ThemiStruct』を通じて、OSSの魅力を、皆様にもっと感じていただければと思います」(八幡氏)

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OSSであることのメリットを活かしてシェアを広げながら、サポート体制、サービス体制を整え、そこで吸い上げた様々な意見や要望に対応することで進化をつづける「Zabbix」。今後、ますます導入企業、周辺環境を整えるパートナー企業が増えれば、「Zabbix」の進化はいっそう加速していくだろう。