NECは11月19日、住宅やビルなどに分散して設置された多数の定置用蓄電池や電気自動車の蓄電池を遠隔から直接操作し、個々の蓄電池の充放電を個別に制御する技術を世界で初めて開発したことを発表した。
再生可能エネルギーの導入拡大を進めていった場合、今後、電力需給バランスの短時間変動への対応が課題となる。同技術により、電力需要をリアルタイムにコントロールすることが可能となり、再生可能エネルギーの一層の導入拡大とそれによる低炭素で持続可能な社会の実現に貢献するという。
現在、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの普及が推進されている。しかし、再生可能エネルギーによる発電は、天候に依存して発電量が急激に変動するため、普及拡大には、リアルタイムに電力需給バランスを調整する新たな仕組み、「リアルタイムデマンドレスポンス」が必要とされている。
これまで、分散する多数の蓄電池を用いて急激に変化する需給バランスの調整をするには、各蓄電池の充放電などの時間を完全に同期する必要があるため、実現は困難と考えられいた。
今回NECが開発した技術は、多数の蓄電池の同期を可能にし、新たな電力需給バランスの調整システムを実現するものである。
新技術は、NEC独自のアルゴリズムで蓄電池の状態に応じた制御を行う「適応制御ソフトウェア」と、クラウド側のリモート制御と蓄電池側のローカル制御の2階層で構成される「階層協調制御システム」を中核にしている。これにより、分散蓄電池の台数によらず全体の同期を取りながら、需給バランスの秒周期の変化にも対応できる制御を行い、通信遅延などにも対応できる高信頼なリアルタイムデマンドレスポンスを可能にするという。
新技術の特長は2つ。1つは独自の適応制御ソフトウェアにより、DRの継続性を実現したことだ。
電力需給バランス調整の仕組みにおいて、蓄電池が導入された場合、全体の需給バランス状態の移り変わりに応じて、充電のみが要求されたり、放電のみが要求されたりすることが予想される。
更に、需要家の蓄電池を用いたデマンドレスポンス(DR)では、需要家ごとの蓄電池の使い方や、蓄電池の仕様の違いにより、電池の蓄電状態や制御可能な充放電出力にバラツキも存在する。これらにより、DRの充放電において、各蓄電池で満充電や放電できない状態になり、DRを継続できなくなる問題が発生する。
この問題解決のため、NEC独自の適応制御ソフトウェアにより、クラウド側で各蓄電池の蓄電状態を集中管理し、蓄電状態に応じて充放電を各蓄電池に配分することで、蓄電池の満充電・枯渇を回避し、DRの継続性を実現した。
2つ目の特長は、独自の階層協調制御システムにより、DRの高信頼・リアルタイム制御を実現したことである。
新技術では、クラウド側のリモート制御と蓄電池側のローカル制御の2階層で構成される階層協調制御システムを構築する。クラウド側では、電力会社が要求する需給バランス調整の総容量と、適応制御から導出される各蓄電池の状態に応じて、十数分間隔で各蓄電池に充放電の分担を割り当てる。
同時に蓄電池側では、各蓄電池に搭載したNEC独自の制御ソフトウェアで、全体の需給バランス状態をリアルタイムに把握しながら、各蓄電池の充放電の分担に応じて秒単位で充放電を制御する。
これらの制御においては、クラウドと各蓄電池との通信が十数分という長い間隔であるため、通信への依存が小さい。その結果、通信で一時的に障害が発生しても制御の継続性を維持でき、高信頼でリアルタイムなDRを実現する。