日立製作所は10月30日と31日の2日間、東京有楽町の東京国際フォーラムにおいて、「日立イノベーションフォーラム 2013」を開催した。とくに、ビッグデータ向けのソリューションが多く、展示されていた。

ヒューマンヘルスケア事業

ヒューマンヘルスケア事業分野では、クラウド型健康支援サービス「はらすまダイエット」と、リストバンド方ライフレコーダー(ライフ顕微鏡)を展示。

「はらすまダイエット」は、企業の健康保険組合などの公的医療保険の運営主体が行う特定保健指導や従業員の健康管理としての生活習慣改善を支援するクラウド型健康支援サービス。 「はらすまダイエット」は、メタボを撃退し、より健康的な生活習慣を身につけるために、日立健康管理 センターの医師、中川先生によって生み出されたプログラムだ。

「はらすまダイエット」

サービス画面には、食事や運動でできる100kcalの減量メニューが描かれた、約300種類の100kcalカードが用意され、参加者はパソコンから運動した内容や食事や飲酒の実績を入力。また、日々の記録(体重・歩数・血圧・腹囲)を入力することで、食事や運動内容と、体重の変化等の関連性をグラフを見ながら把握できる。

たとえば、先週は運動を多めに行ったので体重が減少した、今週は飲みすぎで体重が増加したなどだ。コメント欄には、その日のできごとや言い訳などの入力ができ、楽しみながら継続できる環境を提供する。

今年の10月からは「はらすまダイエット/遠隔保健指導」を追加し、自社の従業員など公的医療保険加入者の中で内臓脂肪症候群(以下、メタボリックシンドローム)と判定され、その改善が必要となった特定保健指導対象者(以下、参加者)のために、企業の健康保険組合などの指導者が行う特定保健指導を日立が代行するサービスも追加した。

一方、ライフ顕微鏡は、加速度センサーと脈波センサー、温度センサーなどを組み込んだ腕時計型の無線端末で、人の活動にともなう動きや脈拍、体温の変化を24時間365日連続して収集・解析する。データ転送はUSBやBluetoothを用いて行うことができる。これにより、運動量、睡眠時間、歩行数などの指標を算出するとともに、行動状況を可視化する。

「ライフ顕微鏡」

同社では2012年には柏レイソルにおいてライフ顕微鏡を使った実証実験を行っている。具体的には、ライフ顕微鏡を試合中の選手に装着してもらい、運動量や歩数、距離のほか、ダッシュやジョギングなど走りの状態をとおしてサッカーのパフォーマンスを分析。ポジションごとの運動の質の違いや、運動量、試合ごとのデータ比較などを細かく解析した。また、選手にライフ顕微鏡を数日間装着してもらい、ライフログから普段の生活と選手のパフォーマンスの関連を分析した。これにより、睡眠とパフォーマンスが密接に関係していることが明確になったという。

柏レイソルでの生活分析

固有振動数計でトンネルや橋梁の異常を検知

また、日立製作所が10月30日に発表した、道路、鉄道のトンネルや橋梁といった社会インフラ施設のライフサイクル管理を実現するクラウド(SaaS型)サービス「施設モニタリングサービス」も展示されていた。

このサービスでは、施設に固有振動数計を設置し、一定時間ごとに計測。貯まったデータは、自動車を走行させながら、車内のRFIDリーダとスマートフォン/タブレットで収集する。同社の実験では、80km/hで走行している車内からも問題なく受信できたという。

固定振動は、ボルトの緩みなど施設に異常があると変化するため、その変化を捉えて検知する。

一番上の線がボルトの緩みによる固有振動数の変化

固有振動数計

個人を特定せずに店舗動線分析

フォーラムの中でもっとも大きなスペースを占めていたのは、店舗動線分析サービスだ。これは、赤外線レーザーにより人の動線を分析しようというものだ。また、カメラでの顔認識を組み合わせることで、年齢、性別などの顧客属性も取得することができる。顧客属性は個人を特定するのではなく、顔の特徴を捉え、これまで日立が蓄えたデータベースをもとに判定するという。赤外線レーザーの測定範囲は約20mだが、棚や人により遮断されるため、棚ごとに設置するなどの工夫は必要。位置の測定誤差は、わずか3cmだという。また、フロアを移動しても、一人の顧客を追従することも可能だという。

店舗動線分析

顧客属性

これら動線分析の特徴は、ICタグやスマートフォーンなど、分析のための機器を顧客が所持する必要がない点と、顧客自身の個人を特定しない点。

動線分析を行う赤外線レーザー

こちらは棚の上のカメラによる棚前行動分析

これらの分析サービスにより、店舗内の売れ筋商品や死に筋商品、初めての来店か何回目の来店か、来店間隔、店舗内外の宣伝ポスター等の効果などを分析できる。ある棚の前に来たときに、顧客の持つスマートフォンに商品広告をプッシュ配信するといったことは、比較的簡単に実現できるという。