今回は、ブリッジ・リサーチ&コンサルティング合同会社の阿部 満氏、サイボウズ株式会社からビジネスマーケティング本部の栗山 圭太氏と佐藤 学氏に登場いただき、先日マイナビニュースで行った「情報システム部門アンケート」の結果を元に、情報システム部門の現状と将来について意見を交わしていただいた。阿部氏と栗山氏はマイナビニュース主催で10月17日に開催される「情報システム部門セミナー」にも登壇いただく予定だ。阿部氏の豊富な実績に基づいた分析、サイボウズの元に寄せられたユーザーからの意見など、非常に興味深い内容となった。今回から4回に渡って、その内容を紹介させていただく。

第一回目の今回は、情報システム部門が持つふたつの顔、コストセンターとプロフィットセンターについての話題から、満足度が上がる情報システム部門とはいかなるものかについて話が及んだ。

対談者

ブリッジ・リサーチ&コンサルティング合同会社 代表社員
阿部 満氏(写真真ん中)

サイボウズ株式会社 ビジネスマーケティング本部 サイボウズ Office
プロダクトマネージャー 栗山 圭太氏(写真左)

サイボウズ株式会社 ビジネスマーケティング本部 ダイレクトマーケティング部
マーケティングディレクター 佐藤 学氏(写真右)

情報システム部門はプロフィット化すべきである

阿部氏:情報システム部門は、ふたつの顔があります。一つは、経理、人事、総務などのシステムで、一般的にはコストセンターとして捉えられるもの。もう一つは、営業支援や製造・生産系の売り上げや利益に関わるもので、プロフィット(利益)センターとして捉えられるものです。最近では、プロモーションやネット販売などを考えると、Webサイトの運営もプロフィットと位置づけられるでしょう。 今回のアンケートでは、仕事にやりがいを感じている人の割合がかなり多かったようですが(63.9%)、これは比較的中小の企業にフォーカスされていたからではないかと思っています。中小企業の方が稼ぐ必要があるので、情報システム部門もプロフィットな面を持つ必要があります。企業としても、売り上げに直結するので、プロフィット部門の方がお金も掛けやすくなる。その結果としてやりがいを感じている人の比率が高くなったのではないでしょうか。

栗山氏:私達、サイボウズは従業員数400人くらいの規模ですが、情報システム部門の中にプロフィットセンターとコストセンターが明確に分かれて存在しています。例えば、情報システム部門の中にはクラウド事業を行っている部署がありますが、彼らは完全に自分たちをプロフィットセンターだと思っています。会社を支えているのは自分たちだ、という感じで自信満々で仕事をしています。一方、経理とか人事などの基幹システムに関わっている者は、会社として必要なのは理解していますが、やはり自分たちをコストセンターだと考えてしまう。そうなると、どんなに重要な仕事であっても、心の中に自信がなくなって、やりがいを感じられなくなってしまいます。

佐藤氏:私は、前職は金融に勤めていました。金融の情報システムでは、まずは確実に動かすことが最優先になります。なので、どうしても守りの意識の方が強くなってしまいます。このように業種によっては、なかなか守りの意識から抜け出すことは難しいかもしれません。逆に言えば、一般企業の情報システム部門は、もっとプロフィットを意識して攻めていってもいいのではないでしょうか。

兼任と専任。情報システム部の現状について考える

阿部氏:現在、日本には年商5-50億くらいの企業が18万社あると言われています。私がコンサルをしている層もここになります。この層は、大抵の場合は専任の情報システム部員はゼロ、または一人が最も多く、場合により多くても三人以下です。つまり、兼任かひとり情シスしかいない、そんな企業がこれだけあります。 兼任の場合、製造業では製造部門の方が多いのですが、卸・小売り・サービスなどの場合は、今回のアンケート結果によると営業が兼務することが多いようですね。ここは少し驚きました。

栗山氏:最近、私達がグループウェアのセミナーを行うと、営業部の方が、かなり参加されます。「営業活動に使えそうだから」ということで、自ら申し込んでいらっしゃるんです。私も、営業と兼任の方が多いという結果には驚きましたが、セミナーの状況を見ると、十分に納得できる結果でもあるわけです。おそらく、どうやってITをビジネスに活用するかを、それを一番考えているのが営業マンなのでしょう。

佐藤氏:ちなみに阿部さんは、専任の情報システム部員がゼロのような企業に対しては、やはり専任を勧められますか?

阿部氏:基本的には、運用フェーズに入った段階では、誰か一人いないと回りません、とは伝えます。ただ、それで専任を置いた企業は、少なくとも私の知っている限りではゼロです。専任が必要だと頭では分かっていても、現実問題としては難しい。これが現状です。

クラウドのコストメリットが出るのは中小企業

栗山氏:経営者の意識としてはどうでしょう?

阿部氏:正面切ってシステムの必要性を訴えても、なかなか理解してもらえません。残念ですが。 でも、「コスト削減」という言葉は経営者の胸には響きます。そこで、私はクラウドをおすすめしています。クラウドであれば、サーバーの運用も不要になり、BCP対策も含めて、メンテやバグ、バージョンアップとか、それらのトラブルもかなり減ります。結果として、コストをかなり削減できるはずです。

佐藤氏:中小企業こそ、クラウドのメリットが出やすい層です。逆に大企業の方が、クラウドのコストメリットは見え難い。

阿部氏:「クラウドを使って、余計な手間とコストを掛けるのを止めて、情報システム部員が、会社の生産性や売り上げを高めるためにITをどう利用するか、その企画を考えるようになれば会社も成長します」こういう感じで、コスト削減と売り上げアップをセットにして伝えると、経営者の方々は喜んで話を聞いてくれます(笑)。

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