10月1日~5日まで千葉県・幕張メッセで開催されているCEATEC JAPAN 2013。ドコモブースでは、10月1日より学術分野・産業分野での利用を始めた「モバイル空間統計」の紹介を行っていた。

モバイル空間統計は、携帯電話ネットワークの仕組みを利用して作成された人口の統計情報。携帯電話は、いつどこでも繋がるように設計されているため、電波を飛ばす基地局が常に各ユーザーの携帯電話の位置を把握している。

電波の使用帯域や、建物や地形などにより、おおよその場所しか特定できないものの「500m四方に何人いるか」(説明員)といった統計情報を取ることができる。この統計情報は、地域ごとの人口分布が分かるほか、性別・年齢層別・居住エリア別の人口構成も分かるようになっている。すでに東京都などと、災害時の帰宅難民の移動動向調査など公共分野での活用が行われている。

地域別、時間帯別に性別、年齢層別の人口動向

「総務省の国勢調査は5年に1度しか発表されないし、人口の移動動向などは国土交通省が統計を取るものの、アンケート調査や、乗車駅で紙を渡して降車駅で回収するという手間がある。その点で、数千万人という顧客を抱えるドコモの空間統計は、サンプル数も十分取れるし、数時間で調査結果を出力することが可能」(説明員)

ドコモユーザーが気になる点では「個人が特定されるプライバシー情報が漏れるのではないか」が挙げられるが、ドコモでは非識別化処理を入念に行っており、位置データとユーザーの年齢層、性別、大まかな居住エリア以外の情報は外部に提供されない。個人情報の利用ガイドラインについてはNTTドコモのWebサイトに公開されている。

「外部にデータを提供することから、プライバシー問題にはかなり気をつけて取り扱っている。もし、自分の個人情報を利用されたくない場合にはドコモに利用停止を依頼していただければ、止めることもできる。幸い、ここまで利用停止依頼はそれほど来ていない」(説明員)

JR東日本がSuicaの利用データを非識別化処理を行った上で、外部に提供するというニュースでは、利用者から数万人からの利用停止依頼が来たと報道されているが、ドコモはそこまでの停止依頼は来ていないと説明員は回答していた。

公共分野での活用以外にも、モバイル空間統計を利用した応用は今後広がっていくという。

「防災計画や、人口の移動動向を見極めた街作りがベースとなるのは間違いない。ただ、全国の流れを知ることで、観光客の誘致をどこから行えば良いのかといった流れも分かるようになる。どこの産業と区切ることなく、様々な連携を模索することで社会の発展に寄与することができれば」と説明員は話していた。

3Dグラフをマップ上に展開し、視覚的に人口動態を把握できる。また、防災計画などで、すでに活用を始めている