「ダンロップタイヤ」で知られる住友ゴム工業は2013年9月9日、日本ユネスコ協会連盟と「チーム・エナセーブ 未来プロジェクト」発足について発表した。同プロジェクトは、ユネスコ協会連盟が取り組んでいる環境保護、地域の文化や自然を守るための日本未来遺産運動に対し、ダンロップがその理念に共感して生まれた協働事業である。

ダンロップ 常務執行役員 ダンロップタイヤ営業本部長の山本悟氏

ダンロップは、創業者であるジョン・ボイド・ダンロップ氏が、125年前に息子のために空気入りのタイヤを開発したことがきっかけとなって設立された。現代のゴムタイヤ発明の基礎を築いたと言われる。1913年には神戸工場が誕生し、日本初の国産タイヤ製造に取り組み、国内のタイヤ業界を牽引するリーディングカンパニーとして知られている。

ダンロップ 常務執行役員 ダンロップタイヤ営業本部長の山本悟氏は、環境への取り組みを通じた持続可能な社会に向けた企業のあり方について、次のように語っている。

「タイヤ製造だけでなく、エコ・ファースト企業として環境への取り組みを経営の軸にしている。タイヤを通じた環境保全として、当社で取り扱うタイヤの90%以上が低燃費タイヤである点を強調したい。国産第一号の自動車タイヤを生産して100年目を迎える今年は、100%石油外天然資源タイヤの開発と量産に取り組んでいる。当社はエコタイヤを通じて、次の世代、未来の地球にとって豊かな自然環境を作り出している」

日本ユネスコ協会連盟は、全国282のユネスコ協会を持ち、世界寺子屋運動や世界遺産運動、東日本大震災子ども支援募金など、地球課題に向き合った活動によって、100年後の子どもたちに日本の美しい自然を残す、未来への継承活動を行っている。

日本ユネスコ協会連盟 専務理事・事務局長の内田眞朗氏(右)

日本ユネスコ協会連盟 専務理事・事務局長の内田眞朗氏は「協会が展開している日本未来遺産運動は、世界に誇るべき文化遺産を保ち、末永く愛されるために充実した環境設備や保全活動を行っている。今回の協働事業は、ダンロップ様が当協会の活動理念に賛同してくださったことから生まれた事業であり、これを通じて、よりよい未来のための取り組みを行っていきたい」と述べ、両者が共に抱いている100年後の未来のための事業活動に、互いに賛同したことで生まれたという点を強調した。

当初から、経営の軸にCSR活動を重視していたダンロップは、地域との交流や社会貢献を基にした「GENKI活動」において、工場周辺の緑化活動などに取り組んできた。2009年から実施しているチーム・エナセーブは、低燃費タイヤ「エナセーブ」シリーズの売上の一部を活用し、タイやインドネシアのマングローブの苗木を植樹する緑化活動であり、2012年末には累計植樹本数が100万本に達している。

「チーム・エナセーブ 未来プロジェクト」と名付けられた今回の協働事業は、ユネスコ協会連盟の世界文化遺産の保護活動や文化や自然環境保護の未来遺産活動をサポートする形で、ダンロップが実施しているCSR活動を国内においても積極的に展開していく内容だ。

活動の第一弾として10月19日には、世界遺産に登録された富士山の構成資産である忍野八海の環境保護や清掃活動を行う予定だ。2014年以降は、ユネスコ協会連盟が各地で取り組んでいる未来遺産運動を、国内のダンロップ工場や事業所などと連携した環境活動を実施していく。なお、これまでの海外の植樹活動の一環の中で、エナセーブシリーズのタイヤの売上の一部を活動資金として提供する。

住友ゴム工業 ダンロップタイヤ営業本部 消費財部長の橋口高志氏

住友ゴム工業 ダンロップタイヤ営業本部 消費財部長の橋口高志氏は、「今後、継続的にユネスコ協会連盟と協働しながら、日本における環境保護を進めていきたい。将来的には、一般ユーザーも含めて、広く多くの人たちに活動へ参加していただき、地球環境保護に向けた取り組みを活発化していきたい」とし、長期的な視点の下に地域と環境を考える取り組みを実践していくと語った。

日本においては、「CSR」に似た意味合いで、1970年代から「企業の社会的責任」ということばがよく使用されてきた。富士山周辺地域の環境保全や、地元に根づいた取り組みなど、地域社会とのつながりを重視した活動が注目される。

企業は、経済市場における法人という存在だけでなく、地域においてヒトやモノ、コトを生み出す拠点ともなる。企業がその地域と向き合い、地域の問題解決を共に取り組むことは、社会に対して企業としての存在価値を提供しようとする1つの大きな動きと言える。

こうしたCSR活動を協働事業として進めることの社会的意義は大きい。今後、ユネスコ協会連盟と住友ゴム工業がさまざまなステークホルダーと連携し、社会へ大きなインパクトを与える活動が増えることに期待したい。