2014年3月期で終了する第17次中計の現状

2013年4月1日付でリコーの代表取締役社長執行役員に就任した三浦善司氏

リコーは9月6日、都内で会見を開き、2013年4月1日付で同社の代表取締役社長執行役員に就任した三浦善司氏が、2011年4月から2014年3月までの期間で進められている「第17次中期経営計画(中計)」の現状と、2014年4月より開始する計画の「第18次中計」の方向性などを語った。

第17次中計は、"成長"と"体質改造"の同時実現をスローガンとして掲げて2011年度から2013年度にかけて、事業の創造と集中、そして筋肉質な経営体質の実現を目指して行われているもので、企業買収や新規事業への投資などが推し進められてきた。

最大のポイントは、プリプロダクション(PP)事業の強化。次々と新製品をラインアップに追加しており、特にこの1年間の間に、カラー/モノクロカットシート、連帳、広幅などさまざまな分野に次々と新製品を投入しており、「狙った通り、ノンハードの売り上げが拡大してきており、新たな事業の核が成長してきている」と評する。

また、同時並行的に、新たにオフィス向けサービスとしてITサービス関連などを推進するための構造転換を進めており、すでにマネージド・ドキュメント・サービス(MDS)やITサービス領域をグローバルで拡大させており、すでにMDS分野では高いシェアを獲得するに至っており、ITサービスを含むネットワークシステムソリューションズの売り上げが順調に拡大してきているとするが、「リコーがサービス企業に脱却するわけではない。もの+サービス。ハードウェアがあってこそのサービスであり、脱ハードウェアということではない」と、あくまでオフィス機器などのハードウェアに根付いたサービスの提供をいう組み合わせを提供していくことで事業の拡大を狙っていくとする。

これまでの各中期経営計画における業績の推移と各種実行された施策

さらに、新規事業の拡大に向け、従来からの基盤事業であるドキュメント領域に隣接するようなオフィス内でのソリューションの拡大と、ペンタックスの買収により強化された光学技術を活用した産業機器や民生機器の市場拡大が掲げられている。特にドキュメント領域に隣接するコミュニケーション領域向けには、超短焦点プロジェクタやインタラクティブホワイトボード(IWB)、ユニファイドコミュニケーションシステム(UCS)などが、旧来の基盤事業との善循環で動き始めており、今後の成長が期待できるとの見方を示した。また、産業機器分野としては、FA機器やセキュリティ機器向けカメラの提供が大きなビジネスになり始めているとするほか、まだ規模は小さいが、中級デジタル一眼レフカメラやミラーレスカメラ、ハイエンドコンパクトデジカメに資源を集中してシェアの拡大を図っているとした。

基盤事業であるイメージングビジネスの周辺にはより規模が大きな市場が複数存在しており、そうした分野をイメージングビジネスと組み合わせることで攻略を図るというのが目指すところの1つの姿となっている

次の3カ年に向けてリコーは何を目指すのか

「我々の方向性はどうなるのかというと、イメージング領域は我々が最も強い領域であり、そこは徹底的に強化を図っていく。しかし、顧客の満足度の向上のためにはインフラなどの新規分野にも挑戦していかなければいけないわけで、そうした領域に強いパートナーと協業して成長市場の開拓を図っていく」と三浦氏は語るが、「どこに狙いを定めていくかについての詳細については現段階ではまだ明らかにできない。実際に第18次中計が策定された段階で話したい」とするにとどまった。

今後は製品軸ではなく顧客軸による4つの領域で事業戦略の策定を行っていくという。例えばオフィス領域では、従来のMFPなどの領域から、紙での出力ではなく、プロジェクタやIWB、タブレットなどへとデータの出力先を加えていくほか、ビジネススタイルの変化に伴うネットワークソリューション関連への対応といったソリューションビジネス的な方向性が示されていくこととなる

ペンタックスの持っていた光学技術とリコーが元から持っていた光学技術を組み合わせることで、新たな事業分野へと事業拡大が可能になったという。ちなみに同社のミラーレスデジカメ「Q」シリーズの命名の由来について真偽のほどは定かではないが、三浦氏は「P(PENTAXの頭文字)とR(RICOHの頭文字)の間に立つものという意味合いで名付けた」としている

ただし、経営の枠組みとしては、事業領域の拡大と、それを実行していくための戦略の策定を元に、顧客のグローバル化に対応するための経営と人材のグローバル化、そしてこれまで「かなり力尽くでやってきた」と評価する体質改造を、体質として身につくまで刷り込む取り組みも併せて進めていくとしており、これまで製品ごとに話題を括っていたが、今後は、顧客の領域に合わせた形での事業展開を図っていくこととなることを強調。「リコーの社名ロゴの下にはimagine.change.という言葉があるが、これは未来を見据えて今を変えるということ。もともとリコーは顧客の視点でビジネスを展開してきたが、事業体制は製品にひも付いたものとなっていた。そうした体制もすでに8月1日付で変更しており、顧客重視のビジネスに立ち返るための変革を進めている」とのことで、第18次中計の3年間は「リコーグループの長期的発展を確実にするための3年間」であるという位置づけを示しており、目指す姿としては、まだ詳しくは言えないが、早い時期でのROE(自己資本利益率)を過去最高にまで持っていきたいとするほか、フリーキャッシュフローも投資を継続しつつ年間1000億円程度を持続的に創出できる体質の確立を目指すとした。

リコーが第18次中計で目指すべき姿のイメージ。第16次、第17次と、リーマンショック以降の激動の市場変化に対応するための取り組みであったが、もともと、前任の近藤氏の退任理由が事業構造や収益体質の改善の成果が見えてきたことによるものであり、2014年度からスタートする第18次中計は、市場環境への変化への対応というよりも、そうして培ってきた新たな体制を積極的に展開して、事業の拡大を図っていく時期となることが窺える