岡山大学は8月19日、食道がんの内視鏡治療用機器「ムコゼクトーム2」を開発し、従来機器に比べ処置時間の短縮と偶発症(合併症)の軽減につながる結果を得たと発表した。

岡山大学病院光学医療診療部の河原祥朗講、岡田裕之教授、同大大学院医歯薬学総合研究科消化器肝臓内科の山本和秀教授らによるもの。詳細は欧州消化器内視鏡学会誌「Endoscopy」電子版にすでに掲載されているほか、9月号の本誌にも掲載される予定だ。

同デバイスは食道がんの内視鏡治療(内視鏡的粘膜下層剥離術:ESD)に用いるためのもの。ESDそのものは、胃がんに対する新しい内視鏡治療法として約10年前に日本で開発され普及が進み、現在では食道がんの内視鏡治療としても保険適応となっている。しかし、食道は胃に比べ壁が薄く、管腔も狭いため、治療手技が難しく、手術が長時間に及ぶこと、ならびに合併症の頻度が高いことなどが問題となっていた。

研究グループはこれまで、安全かつ短時間に胃のESDを施行するためのデバイスとして、安全にがんの粘膜下層の組織を乖離することで、絶縁領域を増やし、流れると合併症をおこす胃の外側向きの電流をカットし内側向きにのみ流れるような設計を採用した「ムコゼクトーム」を開発し臨床応用してきた。

今回の成果は、その技術を食道がんに応用したもので、従来デバイスと比較検討した結果、処置時間は半分以下となり、偶発症(合併症)につながる危険因子を減らすことが可能であることが判明したという。

食道がんは食道に発生した上皮性悪性腫瘍であり50歳以上の男性に多く、アルコール、喫煙などが誘引となると言われており、日本では年間約1万人が食道がんで亡くなっているとされているが、内視鏡技術の進歩により、早期発見が可能となってきており、研究グループでは今回開発されたデバイスを活用することで、従来の方法よりも短時間で安全に食道ESDが可能となると考えられ、それにより、より多くの医療機関への普及が可能となり、食道がんの内視鏡治療の発展、食道がん患者への侵襲の少ない治療に貢献することが期待されるようになるとコメントしている。

なお、ムコゼクトーク2はすでにHOYAペンタックスより保険適応デバイスとして販売されており、今回の成果は、開発と市販後の有用性を検討したものとなっている。また、同デバイスはすでに岡山大学病院ならびに関連病院のほか、食道ESDの症例数では全国トップクラスの大阪府立成人病センターや東京医科歯科大学でも使用されており、高い評価を受けているという。

ムコゼクトーク2

実際の食堂ESDに使用時の画像