富士通は8月15日、同社子会社である富士通研究所が研究を行ってきた「人工抗体技術」を社外へと切り出し、外部リソースを活用して事業の推進を行うことを決定したと発表した。

人工抗体は、抗体の性質に似せて作った人工の化学物質で、これまで同社では、人工抗体として修飾型DNAアプタマーを発案し、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受ける形で基盤技術の確立、ならびに名古屋大学予防早期医療創成センターとの産学連携による技術検証を行ってきた。

修飾型DNAアプタマー技術は、従来開発が困難であったがんや感染症の診断に用いる検査薬の開発を可能にし、新たな診断技術や治療分野への応用が期待されており、同社では、前立腺がんマーカーや西ナイル熱ウイルスに対する人工抗体の開発を通じて、同技術の有効性の実証を行ってきていた。

今回の決定は、人工抗体技術の研究開発を社内で継続するよりも、社外へ切り出し、外部リソースを活用した方が迅速かつ効率的な研究開発が進められると判断したことによるもの。今後は、これまで大学や公的機関の研究者、企業技術者と組んでベンチャービジネスを立ち上げてきた英Anglo Scientific(AS)が設立した新会社Apta Biosciences(ABS)にて人工抗体技術の研究開発を進められることとなり、診断や治療への適用を通じて同技術の事業化を目指すこととなる。

なお富士通は、今回の人工抗体技術のスピンオフにあたり、2010年に設立したコーポレート・ベンチャー・キャピタル・ファンドより出資を行っていく予定と説明している。