現在放送中のテレビアニメ「幻影ヲ駆ケル太陽」のキャラクター原案は、イラストレーター・漫画家のあかつきごもく氏が手がけている。同氏はマイナビ刊行の雑誌「Mac Fan」の連載から生まれた音声素材集「Mac音ナナ」のキャラクターデザインなども手がけてきた人物だ。今回は、作画作業の半分をアナログ、もう半分をデジタルで行うという同氏の「色塗り」に注目し、その手法の一部を実演しながら見せていただいた。

イラストレーター・漫画家のあかつきごもく氏

あかつき氏が愛用している筆記具。左からシャープペンシル、コピックマルチライナー、丸ペンとGペン

あかつき氏は、線画をアナログ作業で完成させた後、それをスキャンしてPCに取り込んで、カラーはデジタルで塗るという手法をとっている。線画をスキャンした後に下書きの線を削除しやすくするため、下書きには一般的なシャープペンシルのほか、あたりをつけるためのカラー芯のシャープペンシルも使っているという。ペン入れは、丸ペンやGペンといったトラディショナルなペンのほか、コピックマルチライナーを愛用。使用感が気に入っているということで、芯の太さを細かくそろえ、さまざまなペン入れに活用しているそうだ。

あかつき氏が連載していたMac FanMac Fan掲載の「棚からリンゴ」の下描き(左)、ペン入れ済みの原稿(中央)、掲載された紙面(右)。線画まではアナログ、着彩はデジタルで行っている

同氏がデジタル作業で用いている入力デバイスは、ワコムのペンタブレット「Intuos 5」。サイズは最も小さなsmallを使っている。このサイズを選んでいるのは、「ストロークが小さいほうが描きやすく感じるので」という好みの部分が第一の理由だそうだ。また、「手の振り幅が少ない方が体力が長く持つので、作業が長丁場になればなるほど、作業面が小さいほうが助かります」ということで、長時間にわたる作業の疲労を軽減する意味もあるとのことだ。

印象的な「照り返し」を入れる

今回は、「幻影ヲ駆ケル太陽」の主人公・太陽あかりの色塗りの工程を見せてもらった。アニメで採用されているセル画の塗りと方法や色選びは異なるが、あかつき氏が普段の創作活動でよく使っている手法ということで、参考にしてみてほしい。あかつき氏は、かつて「Photoshop 4.0」を長きにわたって使っていたそうだ。現在、「Photoshop CS6」に移行した後も、当時使っていた物に近いカスタムブラシを作成し、それを色塗りの際に用いている。光の照り返しの塗り方については、あかりの靴の部分を例に出して実演してもらった。

「幻影ヲ駆ケル太陽」の太陽あかりを例に、着彩の方法を教えていただいた

まず面積が広い部分は「塗りつぶしツール」で一度に色をつけ、それからレイヤーにロックをかけて、線画の外にブラシの色がはみ出さないように下準備を行う。そして、影色を入れ、光の照り返しをブラシでなぞってつけていくのが主な作業フローだという。照り返しは、「あかりの色は、全体的にあったかい雰囲気にしたい」という思いから、照り変えしには赤系の暗色を選んでいる。

靴のつま先の部分に、あかりのイメージカラーである赤系の暗色で照り返しを入れ、絵に奥行きを出す

髪のハイライトや肌の塗りは?

女性キャラクターでは特に重要な肌の塗りは、最初の工程は先ほどと同様に広い部分を「塗りつぶしツール」で塗るところから始まる。そして、メインの影の色のほかにもう一段階、同氏いわく「ほわっ」とした影をつける。この工程にはブラシセットの中からぼかし効果が出るブラシを用いて、引いてみたときにほんの少し見える程度の淡い陰影をつける。

肌の色は、ベースの色と影の暗色のほかに、もう一段階淡い影をガウスのブラシでつける

髪のハイライトはホワイトで入れるのではなく、線画の段階で髪に描き入れ、着彩の時に髪の色となじませる

また、髪の毛を描く際には、先に髪の毛のハイライトまで線画の段階から描き入れてしまうことが多いという。最初の段階では主線と同じ黒で描き、後で髪の濃い影の色と合わせた色にするために、通常のブラシで髪のハイライトのラインの色を塗りつぶす。また、あかりが頭に結んでいるリボンのラインには光っているかのような効果を入れている。これは、まずベタ塗りしたところからブラシで白色を載せて削り、その部分に対して、レイヤースタイルで外側の光彩、ハードライトと設定して表現している。

リボンのラインには、レイヤースタイルのハードライトを設定して輝いているかのような演出を加えている

あかつき氏は、デジタルとアナログのよいところを、自身にフィットする形で取り入れ、自分の"感覚"に沿う最適の手段を自然体で選び取っているように見えたのが印象的だった。今回紹介したのはテクニックの一部だが、イラストを描く人は参考にしてみてほしい。