内田洋行は6月10日、筑波大学附属小学校と、1人1台のタブレット端末を有効活用する教育事例の開発を目的とした産学協同の実証研究を開始した。

筑波大学附属小学校では3月、授業・学習でICTを有効に使える内田洋行独自の教室空間コンセプト「フューチャークラスルーム」を採用し、授業において新たなICT利活用を図るための教室整備を開始していた。

内田洋行「フューチャークラスルーム」

これを機に、筑波大学附属小学校と内田洋行では、筑波大学附属小学校の全教科・全学年を対象に1人1台のタブレット端末を活用した授業の特性や効果的な活用方法などを検証し、具体的な授業事例の開発を共同で行うこととなった。この実証研究は、日本マイクロソフトや富士通とも協力して行われる。

近年、学校教育においても児童・生徒が情報や情報手段を主体的に活用する能力の育成が要請されている。日本政府では、政府IT戦略本部が定めた「新たな情報通信技術戦略工程表」に基づき、デジタル教科書・教材の導入に関わる研究開発・検討が実施されており、2020年度までには児童生徒1人1台の情報端末の整備の本格的な展開が計画されている。

また、総務省が2010年より児童・生徒が1人1台の情報端末を活用する授業を推進する「フューチャースクール推進事業」を実施しているほか、文部科学省では「学びのイノベーション事業」において授業でのデジタル教科書・教材の開発・活用手法の研究等が推進されている。

このような中、内田洋行では、最先端のICTを活用して多様な学習形態を実現する学習空間が必要とされることから、フューチャークラスルームを同社の本社ビルと大阪支店に設置して一般公開し、学習空間のあり方を検討していた。

一方、筑波大学附属小学校では、将来の教育のあり方を考える上で、ICTを活用した効果的な学習活動に関する研究が重要であるとし、フューチャークラスルームのコンセプトを採択して「未来の教室」を設置した。

筑波大学附属小学校「未来の教室」

未来の教室では、教員が児童の端末に課題を配信しながら児童がグループやペアとなってそれぞれの考えを持ち寄ったり、画面を提示してディスカッションを行うような、多様な学習活動を実現するために、1人1台のタブレット端末、複数の投影スクリーン、移動が容易な可動式の机・椅子などを活用する。このような環境によって、教員と児童、児童と児童とが多面的に接触する授業を実現し、児童らが自ら考え、自分の意見を発表する力を育成することが期待されるという。

筑波大学附属小学校と内田洋行は、この未来の教室を活用し、大きく「ICTを活用した授業事例の研究開発」「ICT活用を前提とした指導方法や学習環境の研究」の2つを進めていく。内田洋行では、各教科での授業実践サポートのほか、筑波大学附属小学校 ICT教育研究部の下で、ICTの教育現場における有効的な活用方法の開発支援を行う。

本実証研究で開発された授業事例については、筑波大学附属小学校で開催される研究会などで発表し、普及促進を図る。また、筑波大学附属小学校で開発された授業事例を基に、多くの学校で実現可能とするシステムや周辺機器・コンテンツ等の開発、製品化を行っていくとのことだ。