NECは7日、DNAの抽出から解析までのプロセスを一貫して行うことができる個人識別用ポータブル型DNA解析装置の精度と性能について、ニュージーランド環境科学研究所(ESR:Environmental Science & Research)と共同評価を実施し、高い評価を得たことを発表した。

NECでは、2013年10月から、日本の科学警察研究所とポータブル型DNA解析装置の共同評価を行っているが、今回、海外で初めて評価されることとなった。

ポータブル型DNA解析装置は、通常は個別の装置で行うDNA解析のプロセス──(1)細胞の採取、(2)DNAの抽出、(3)DNA量を増やすPCR増幅 (4)DNAの大きさを調べる電気泳動、(5)個体差を判別するSTR解析 ── といった作業を総合的に行えるように、機能を一体化した装置である。これにより、各プロセスがスムーズにつながり、また加温冷却を繰り返し行うPCR増幅作業が大幅に高速化することで、DNA抽出から解析までの作業を短縮、通常数日はかかる全工程を約60分で完了することができる。ポータブル装置はおよそスーツケース大に小型化しており、持ち運んで使用することができる。

NECとESRは、迅速な犯罪捜査を実現する手段として事件現場でのDNA鑑定の有効性を検証する目的で、2013年5月20日~5月31日の期間において、ESRの提供するDNAサンプルを用いて実用化を視野に入れた評価を行った。

従来のDNA解析手法による解析結果と、本装置で行った解析結果を比較して評価を行った結果、対象の34サンプル全てについて、十分な精度と再現性を有し、データの信頼性があることが実証された。サンプルについては、飲みかけのペットボトルの縁から採取した唾液や、混合サンプル(2人分の混ざった口腔内粘膜)、血液(液体・乾燥・血痕)などが使われた。

NECとESRは、専門家でなくても手軽に装置を扱える容易性や研究所外での評価も行うことで、携帯性や実用性なども確認した。

NECは、今回の評価を基にポータブル型DNA解析装置の改良を続け、2014年度の商用化を目指すという。また犯罪捜査だけではなく、医療・ヘルスケア・社会ID(災害現場・親子鑑定・その他身元確認用途)・食品・農業・動物などの検査にも利用範囲を広げていきたいとしている。