セコムは5月28日、環境の変化などに左右されず、肌の色を精確に再現できる「モバイル遠隔診療システム」を開発したことを発表した。

日本は65才以上の人口が3000万人を超え、医療費の負担が増えるなどの問題が日増しに強くなっているが、それに伴い、訪問診療や訪問看護などの在宅医療の需要が急速に高まっており、医師の負担軽減に向けた遠隔診療の普及に期待が集まっている。

しかし、遠隔診療では、じかに患者を見て判断することができないため、さまざまな課題を解決する必要がある。問診時の表情や顔色などを診る視診もその1つで、各家庭の照明環境が異なるため、忠実な肌の色の再現は難しかった。

今回、同社が開発した診療システムは、独自の画像処理技術により、部屋の明るさや照明の種類に依存することなく忠実に患者の顔色や患部の色を再現することが可能であるため、、顔色はもちろん、湿疹・褥瘡(床ずれ)・色素沈着の観察にも有効であり、必要な医療処置などをより迅速に行うことが期待できるようになるとする。

また、訪問看護師が持ち歩けることを前提とした小型・軽量設計、ならびに短時間設置の思想による無線通信機能とバッテリ搭載による、インターネット回線や電源の準備の不要化が図られている。

さらに、自動で画像サイズの調整を行うことができるため、医師と会話する際などには、対面診療のような環境を再現することが可能なほか、セキュリティ技術で培ってきた顔認証技術を電子カルテシステムと連動させることで、患者本人のカルテを確実に表示したり、過去の遠隔診療時の画像との比較を行うために、色を正確に再現した画像データを保存しておくことが可能で、医師の必要に応じて過去画像と現在の画像を並べて表示し、経過観察を行うことができる仕組みとなっている。

ちなみに、これらの過去画像はすべて同社の「セキュアデータセンター」で安全に管理するという。

なお同社では今後、同診療システムを用いることで、独自のメディカルサービスの提供を視野に、超高齢社会に必要なサービスの開発を進めていくほか、色再現技術を監視カメラに用いることで、洋服や髪の色を用いた迷子の自動検索や、車体の色による盗難車輌の認識などのセキュリティニーズへの応用も行っていく予定としている。

「モバイル遠隔診療システム」の概要。音声・映像通話を行い、診療に必要な視覚情報を医師が確認することができる