鮮やかな色彩の作品で人々を魅了するフォトグラファー・蜷川実花。2013年初頭には彼女が撮り続けてきた著名人のポートレートを集めた写真集『NINAGAWA WOMAN2』と『NINAGAWA MEN1』が刊行され、5月にはそれらを一堂に集めた展覧会「蜷川実花写真展 LUCKY STAR NINAGAWA MEN & WOMEN」が表参道ヒルズで開催された。彼女が人を撮る時、いったいどんなことを考え、作品を生み出しているのだろうか。ポートレートのことを中心に、近年の蜷川の活動について話を聞いた。

蜷川実花
写真家・映画監督。木村伊兵衛写真賞ほか多数の賞を受賞。映像作品も多く手がける。2007年、映画『さくらん』監督。2008年、個展「蜷川実花展 地上の花、天上の色」が全国の美術館を巡回し、のべ18万人を動員。2010年、Rizzoli N.Y.から写真集「MIKA NINAGAWA」を出版、世界各国で話題となる。第2作目監督映画『ヘルタースケルター』が2012年7月より全国公開し、22億円の興行収入を記録。2013年春、上海・外灘に内装プロデュースを手掛けたカフェ&バー「Shanghai Rose」がオープン。また、蜷川実花の世界を気軽に表現できる無料カメラアプリ「cameran」をリリースした

――蜷川さんはこれまで、数多くの著名人のポートレートを撮影されています。それらを収録した写真集は男性と女性に分冊して刊行されていますが、男性と女性を撮る際に異なる部分はありますか?

はい、かなり違いがあると感じています。女性を撮る時は、友達のような気持ちの時もあるし、お姉さんのような気分の時も、お母さんのような心持ちの時もあります。あるいは、男性的な気分になる時もありますね。でもどの方にも共通して、女性に対しては「同士」を撮っている感じがするので、格好良い女性像になることが多いです。私の好みの表情を撮ると、それが格好良い表情になっていることが多いんです。

逆に、男性を撮る時は自分が乙女になっていて(笑)、「格好いい!」と思いながらシャッターを切っています。最前列で格好いい姿を見させていただいて、その魅力を写真を通してみなさんと共有しているという感覚です。

――それでは、今回展示されている大空祐飛さんなどの宝塚歌劇団のスターを撮影する時はどちらを撮る気持ちで撮っているのかどちらにあたるのでしょうか?

男性ですね! というのも、写真を見てくれる人は女性だと想定していて、彼女たちが宝塚の男役の方を見たら「わあ、すごい」だとか、「かっこいい!」って感じると思うので。男性を撮る時よりも、より強く男性という部分を意識して撮っています。

とはいえ、もちろん相手は女性なので、お互い気を抜くと、どこかで女性らしさが出てくることもあります。なので、私も男性的でかっこいいところを狙って撮るし、被写体となっていただく方も(男らしさを)意識していただいていると思います。