ソニーは5月22日、2013年度経営方針説明会をソニー本社で開催した。説明会では、代表取締役社長 兼 CEOの平井 一夫氏が経営方針をプレゼンテーション形式で説明。全社一丸となり"One Sony"で、エレクトロニクスの黒字化の達成やグループ全体での営業利益率5%以上を目指すと語った。
平井氏は説明会冒頭、「昨年、仕事の約1/4の時間を費やし、16カ国、45カ所のエレクトロニクス事業所、研究開発拠点、ソニーピクチャーズ、ソニーミュージック、ソニー生命、ソネットといった全グループ会社の社員と議論を交わしてきた。また、販売店、エンドユーザーとも直接話した」と述べ、ソニーの将来に対する思いや課題の再確認を行ってきたことを強調した。
これらの対話を通して「ソニーグループは、将来に向けて事業を変革、成長させるだけの十分な潜在能力があると思う」と手応えを掴んだ平井氏。続けて「ソニーがソニーらしく存在するには、感動や驚きを提供し、好奇心を刺激し続ける会社でなくてはならない」と話し、高機能製品だけではなく、「感性価値を持った商品」を提供する必要性があると述べた。
エレクトロニクス事業は赤字
続いて、昨年度の業績を説明した。平井氏にとって、エレクトロニクス事業の再生が最大の使命であったという。しかし1344億円の赤字に終わり、テレビ事業においても696億円の営業損失を計上している。一方で、エンタテインメント、金融事業では、前年度を超える売上高と営業利益を達成し、堅調な推移を見せている。
エンタテインメントでは「パッケージメディア市場の縮小が起こりながらも、アーティストの発掘、育成により市場シェアを上げることが出来た」と語り、EMIの買収により200万曲以上の版権所有に至ったことと合わせて、安定した事業基盤を構築できたとした。
基幹事業であり、黒字化が待たれているエレクトロニクス事業については、昨年発表した平井体制での経営方針"5つの重点施策"についての進捗状況を説明した。
5つの重点施策は *事業ポートフォリオの見直し/経営の更なる健全化 *テレビ事業の再建 *新興国での事業の拡大 *コア事業(デジタルイメージング/ゲーム/モバイル)の強化 *新規事業の創出/イノベーションの加速
これらの重点施策と共に、経営テーマとして「事業の方向性を定める」「新体制の構築」「意思決定と実行スピードの向上」を掲げていた。この点では、昨年4月にマネジメント再編を行い、エレクトロニクス再生のための土台作りとして「全社横断的な変革プロジェクトを立ち上げた」という。平井社長をリーダーに、各テーマの具体性、進捗状況を厳しく管理し、トップダウンで意思決定を行ってきた。
コア事業の強化については、ソニーの強みであるCMOSイメージセンサーの生産能力を拡大するために投資を行い、ゲーム事業の強化を目的としたインタラクティブなクラウドゲームサービスを持つ米Gaikaiを買収した。また、中長期的な成長ドライバーを目標としたソニーオリンパスメディカルソリューションズの設立など、今後の成長領域への積極的な投資を行っている。
経営効率化については、事業ポートフォリオの再編や財務基盤強化を目的とした資産売却や、構造改革により各部門の効率化を図り、「変革の第一フェーズを終了した。今年度は変革の7合目、8合目に進めていく」とした。
続いて、テレビ事業の再建については「いたずらに出荷台数を追うのではなく、固定費削減とオペレーションの効率を強化」したことにより、赤字額が前年度(2075億円)の半分以下である696億円まで減少、今年度の黒字化に向けて想定以上に推移している。
新興国での事業では、ブラジルやメキシコで前年度に比べ2桁の成長率を達成。更に、インドでは液晶テレビシェアNo.1になったという。コンパクトデジタルカメラなど主要AVカテゴリでも1位を記録し、カテゴリ全体の売り上げでは30%増加となった。
エレクトロニクスのコア事業については厳しい市場環境が影響して、スマートフォンを除き、多くの主要製品が販売計画を下回る結果となった。しかし、「その中でも"One Sony"を示す魅力溢れる製品を世に出すことが出来た。それがXperia Zだ」と、Mobile BRAVIA Engine、Walkmanアプリ、Exmor RSなど、ソニーの技術を惜しみなく投入したスマートフォンに胸を張る。
Xperia Zは約60カ国で販売。日本でもNTTドコモから発売され、販売数量で6週連続1位を記録した。また、2月下旬から販売開始となった欧州においてもドイツ、イギリスなどを中心に顧客から高い評価を得ているという。
イメージング事業ではDSC-RX1が非常に高い評価を受け、日本のカメラグランプリ2013 大賞、欧州のTIPAアワード2013 ベストプレミアムカメラを受賞した。これらの評価により、価格低下が進むカメラ市場において高付加価値モデルのこれからの可能性を開拓できたとした。