ゆりあげ港朝市共同組合は、5月4日(土)から6日(月)の期間に閖上(ゆりあげ)で朝市を再開すると発表した。再開にあたって、4日から6日の3日間を記念の「復興船出市」と銘打って開催。お買い得な商品とイベントを企画している。東日本大震災後、同港で朝市が開かれるのは今回が初めてとなる。

ゆりあげ港朝市の歴史と震災前の様子

宮城県名取市にある閖上地区は江戸時代以前から漁港として栄え、伊達政宗が掘らせたとされる日本最長の運河「貞山運河」を使い仙台城下に海産物を運んだという歴史を持つ。 閖上港では近海で獲れた新鮮な魚介類が水揚げされ、中でも、ミシュランガイドで三ツ星を獲得するほどの高級寿司店に「アカガイは閖上産だけを使う」と言わしめるほど、赤貝の産地として有名だ。

その閖上地区で約30年前から日曜・祝日に「ゆりあげ港朝市」が開かれています。「よい品をより安く」をモットーに新鮮な海の幸や地場産品の野菜などが勢ぞろいし、通常約5000~1万人の観光客が集まっていた。

ゆりあげ港朝市の様子

東日本大震災から2年、すこしづつ前に進み始めたゆりあげ漁港

宮城県名取市も大きな被害にあった地域のひとつ。その中でも閖上漁港は大きな被害を受けた。震災前までは朝市を港で行えていたが、震災によって壊滅的な被害を受けた閖上港は朝市を行えるような状況ではなかった。

震災前、朝市の出店者は、みな自分の店、水産加工工場などを持ち、日曜・祝日の朝市は、町を活気づけるために開催するイベントだった。しかし、今は販売するための店舗がなく、この朝市で生活を支えなければならない状況に陥っていた。

東日本大震災から2年が経過し、少しづつではあるが被害にあった地域で復興の足音が聞こえてきた。震災後、一時的にイオンモール名取にある西側駐車場の一角を利用し、暫定的な朝市を開催、元々の集客力と復興へ歩もうという地元の人たちの思いもあり、朝市には多くの人が来場し、地域コンテンツのひとつとして元の姿を取り戻しつつあった。

少しづつ前に進み始めている朝市

ゆりあげ港朝市協同組合の理事長 櫻井広行(こういち)氏が語る復興への思い

「震災後、以前より取引があった仙台卸売市場にて食材を調達し、被災地を回って無償にて配りました。また、市役所にて溜った支援物資(賞味期限が近い物や数が足りない物)も貰い受け、避難所に来れない方々へも配って回りました。その事に関して、各種メディアに積極的に出させて頂いた事で、国内外より多くの支援を頂き、何か恩返しをしなければと常に思っております。」

復興に向けてつながった地域コミュニティ

「また震災後、三週間で朝市を名取市にあるイオンモールにて仮設的に開始しました。皆さんにとても喜んで頂きました。それと同時に、朝市が地元に真に根ざしていた事を改めて感じました。そこで、早期の現地再建を進めるに至りました。ですが、ただ再建するのではなく、復興を目指そうと思い、より魅力的な朝市を作ろうと考えております。」

「とにかく、閖上地区の被災者を元気づけることが第一です。「YURIAGE」ブランドを作り観光を巻き込んで大きく展開して行く事を考えております。また、地元NPOとも協力し、ゆりあげ港朝市を基点として、住民主導型の復興まちづくりを行える組織づくりを進めていきます。元々、コミュニティー活動が盛んな地域であったため、彼らが活動する場を早期に提供したいと思っています。」

「多くの皆様と協働して行きたいと思っております。復興は自我を一旦棚上げし、地域の復興に対して何が出来るのか常にピュアでなければならないと思っております。」

悲しくても現実と向き合って前に進まなければいけない

離れていたり、時間がたったりすると忘れてしまうこともあるけれど、たまには思い出して欲しい被災地のコト

ゆりあげ朝市では、「ゆりあげ はんじょう募金」というクラウドファンディングを実施している。一口1万円から参加が可能で、ゆりあげに遊びにきてもらった人たちの心のよりどころとなるようなウッドデッキの広場が作られる。募金講座は宮城県の地銀である七十七銀行 閖上支店に口座が開設されている。

かなしいことだけど、わすれないように

櫻井氏は「ゆりあげの復興は、まずは俺らが元気になって復興するしかない」と強調。

震災から時間がたつと、少しづつ忘れてしまったりすることもあるが、ふとしたときに被災地のコトを思い出して欲しいと思う。共に復興のために、是非ともこの春の連休は朝市会場に足を運んでみて欲しい。