東北大学は4月18日、名古屋大学(名大)、京都大学(京大)、米カリフォルニア大学ロサンゼルス(LA)校およびバークレイ校との共同研究により、日米共同プロジェクトとして1992年に打ち上げられ、現在も運用中の磁気圏尾部観測衛星「GEOTAIL(ジオテイル)」の長期にわたるデータの詳細な解析から、連続した電波が地球の極地方から宇宙空間に向かって放射されていることを発見し、その電波は地球の自転と共に旋律(周波数)が変化する特徴を持つことが判明したと発表した。

成果は、東北大大学院 理学研究科 惑星プラズマ・大気研究センターの名誉教授の森岡昭名誉教授(客員研究者)、同・惑星電波観測研究部門 博士課程3年の栗田怜氏、同・三澤浩昭准教授、東北大 惑星大気研究室の笠羽康正教授、名大の三好由純准教授、京大の小嶋浩嗣教授、カリフォルニア大LA校のV.アンジェロポウロス博士、カリフォルニア大学バークレイ校のP.マクファデン博士らの国際共同研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、3月19日付けで「Journal of Geophysical Research」電子速報版に掲載済みで、近日中に正式なオンライン掲載および印刷版への掲載がなされる予定だ。

極地方でしかほぼ見ることのできない壮大な宇宙規模の物理現象として、オーロラがあり、その発生の仕組みは未解明の部分もあるものの、大まかには、太陽風で放出されたプラズマが地球の磁気圏内に突入し、極地の大気上層部で窒素や酸素などの分子と衝突することで発生すると考えられている。

そのオーロラの中には、一気に広がる「オーロラ爆発(ブレイクアップ)」と呼ばれる現象があり、それに伴って強い電波が突発的に宇宙に向かって発射されることは以前より知られていた。これは、太陽面の爆発である「フレア」と同様に、急速に加速されたオーロラ電子が作り出す突発性の電波だ。これに対し、今回発見された電波は、強度は弱いながら連続したもので、なおかつ宇宙空間に向かって放射されていることから、オーロラ爆発に伴う突発性の電波とは大きく異なっていた。

研究チームは、今回発見された電波は波長がキロメータ級であることから、「連続性地球キロメータ電波」と命名。この電波は、地球の1自転に同期して周波数が200kHzから600kHzまで、ある規則に従って変化するのが特徴だ。研究チームはこのことを、地球が丁度24時間周期で電波を用いて宇宙に向かって「ハミングしている」と例えると同時に、「地球が電波灯台のように光り続ける電波星であるということができる」とも述べている。

さらに、連続性地球キロメータ電波の周波数は、春分と秋分を挟んでまったく反転するという変化の規則性も明らかとなり、研究チームは「地球が回転することによって何が電波の周波数を変化させるのか、とても不思議な現象」だという。

下の画像は、実際にGEOTALIで観測された地球キロメータ電波の1日の変化を表したグラフだ。横軸は世界時(グリニッジ標準時)、縦軸は周波数。24時間の内に周波数約200kHzと600kHzの間を規則的に波打って(正弦波状に)変化している。また上図は1993年1月26日で、下図は同年5月29日と、春分を挟んで冬と夏となっており、周波数変化の様子が反転しているのがわかるはずだ。

画像1。GEOTALIで観測された地球キロメータ電波の1日の変化を表したグラフ。上は1月、下は5月のもので、きれいに反転している

これまでの観測結果を踏まえて、この奇妙な電波発生とその周波数変化の原因を探る研究が続けられているが、現段階では、自転に伴って歳差運動をする地球の磁場と太陽風との相互作用が生み出す効果が関与していることが強く示唆されており、それを基にした仮説が立てられている。研究チームは今後、この仮説を実証する研究が必要だとしている。

また、この仮説が正しいとした場合、地球で見つけられたこの現象は、磁場を持つ天体に共通すると考えられるという。今後の惑星の磁場やプラズマ、電波放射の研究に役立つことが期待されるとした。