日本マイクロソフトは3月14日、昨年1月から活動を行っている東日本大震災の被災地支援プロジェクト「東北UPプロジェクト」の実績を説明。今後は、地元のNPOに活動を引き継ぐ予定であることを明らかにした。

「東北UPプロジェクト」は、「雇用」の課題解決のためにITスキル講習と就労支援プログラムを行い、被災者の雇用可能性の向上を被災地NPOと協働して実施するプロジェクトで、ITスキル講習のカリキュラム・テキストの開発、支援を行うNPOへのIT講師養成研修の実施、被災者へのWindows、OfficeおよびOffice 365を主体としたITスキル講習の実施、プロジェクトのポータルサイトを通したプロジェクトのトレーニングマテリアルの提供、アドバイザリー・ボードの設置と運営、自治体・民間による就労出口施策との連携などを行ってきた。

「東北UPプロジェクト」の概要

プロジェクトではこれまで、講師養成講座を3回実施し、17名の講師を養成。その人たちが就労支援講座を300回開催し、修了人数は延べ851名にのぼるという。そして、このうち462名が求職を行い、193名が実際に就職。就労率45%(目標は30%)を達成した。

「東北UPプロジェクト」の実績

日本マイクロソフト 業務執行役員 社長室 室長 シチズンシップリード 牧野益巳氏

日本マイクロソフト 業務執行役員 社長室 室長 シチズンシップリード 牧野益巳氏は、これまでの活動を振り返り、「マイクロソフトでは、被災地支援を経営の最重要課題と位置づけ、これまでIT企業として何ができるかを考え、自治体やNPOと連携しながら支援活動に取り組んできた。東北UPプロジェクトは、2012年1月から活動を開始し、今年の3月でひと区切りをむかえるが、今後はNPOに活動を引き継いでいく。この活動では、就労意識を高めることや就労能力を高めること目的に活動してきたが、一定の成果を見た」と挨拶した。

岩手県釜石市で「東北UPプロジェクト」の実際の活動を行ったNPO法人 @リアスNPOサポートセンター 代表理事 鹿野順一氏によれば、当初は受講者のスキルに差があり、講習内容を初心者に合わせるしかなかったが、その後、ある程度スキルを持った人に絞って行うようにしたところ、本気でスキルを上げようという人が増え、現在はキャンセル待ちの状態だという。

実際の講習会の様子

NPO法人 @リアスNPOサポートセンター 代表理事 鹿野順一氏

就労率45%という数字について鹿野氏は、「就労する際は、結局、仕事の中味の問題になる。失業者は、休職活動を行っている人をさすが、それ以外に休職活動を行っていない人もいる。そういった人には、求職行動を起こしてもらうことが重要だが、講習会はそのいいきっかけになっており、働く気持ちの準備ができるようになっている」と、見えざる効果もあると指摘。受講者からは、この先のキャリアアップ、スキルアップに役立っているという声が多く聞かれたという。

なお、今回のプロジェクトでは、ビスデザインによるSROI(社会投資効果)を使った支援活動の効果測定も行っており、それによると、今回のプロジェクトの投資効果は4.46(投資額に対して4.46倍の効果)で、貨幣価値に換算すると7,555万円になるという。

支援活動の効果測定結果

NPO「育て上げ」ネット理事長 工藤啓氏

「東北UPプロジェクト」運営事務局で、NPO「育て上げ」ネット理事長の工藤啓氏はこういった効果測定について「前政権では、事業仕分けによって補助金が打ち切られた活動もある。感情的には必要だということは理解してもらえるが、効果測定によって論理的に必要性をアピールできる」と効果測定の意義を説明。

鹿野氏も「NPOの活動には、評価が見えにくい部分もあり、支える人を支えるしくみがない。このような効果測定は、共感を得る土台になる」と、必要性を訴えた。

なお、日本マイクロソフトでは今後、IT経営力大賞主催団体との連携による中小企業のIT経営力強化支援、RCF復興支援チームとの連携によるコミュニティの再生支援、自治体との災害BCP協定の推進活動を通して、復興・再生支援を行っていくという。

災害BCP協定では、災害時に自治体のサイトがダウンした場合に、ミラーサイト切り替えによる情報提供を支援していくという。

日本マイクロソフトの今後の復興・再生支援