計測機器大手Agilent Technologiesの日本法人であるアジレント・テクノロジーは2月28日、同社の汎用シグナル・アナライザの最上位モデル「Agilent N9030A PXAシグナル・アナライザ」のオプションとして、リアルタイム・スペクトラム・アナライザ(スペアナ)機能の提供を開始したことを発表した。

リアルタイム・スペクトラム・アナライザ機能を搭載したPXAを用いることで、航空・防衛や次世代通信、天文/宇宙や次世代半導体などの先端科学研究分野、デジタル家電や電気自動車などのハイエンド分野における小さな信号や、大信号に隠れてしまうような信号、一瞬で消えてしまうような信号などを観測したいというニーズに対応することが可能になるとする。

ソフトウェアで提供される機能ながら、ファームウェアのアップデートによる搭載されている高性能FPGAの回路の最適化、ならびにFFTアルゴリズムの工夫により、最大160MHz帯域までの全帯域幅において、75dBのスプリアス・フリー・ダイナミックレンジを実現しており、50GHzまでの測定周波数において、詳細な解析を行うことが可能となるとしている。また、高速A/Dコンバータを搭載しており、最短2nsのパルス状の信号を捕捉することが可能なほか、3.57μsの短い信号に対して、100%のPOI(捕捉率)を実現しているという。

リアルタイムスペアナ機能を搭載した「Agilent N9030A PXAシグナル・アナライザ」。ソフトウェアであるため外観や内部のハードウェア部分については従来とまったく変更がない(FPGA内部の回路構成などについてはファームウェアによって変更されている)

さらに、-157dBmの感度(10GHz時。プリアンプなし)に加えて、リアルタイム測定スパン内において分解能帯域を変更する機能も提供しており、これらの感度と機能により、短時間で連続的に発生する事象や間欠的な小信号なども観測可能となり、その結果、高いPOI(捕捉率)を実現したとしている。

信号の強弱により色分けされており、ウインドを開けて、信号が飛び込んできた際にトリガをかけるといったことも可能。また、ウインドの図形についても、自由に描くことが可能だという

加えて、同社のベクトル信号解析(VSA)ソフトウェア「89600B」と連携させることで、時間軸、周波数軸、モジュレーション軸での測定に対応するトラブル解析ツールの利用も可能になるため、問題の根本原因の発見が容易になるほか、ベクトル信号発生器や任意波形発生器を使用して、被測定物から捕捉した信号を再生するといった使い方も可能になるという。

提供されるリアルタイムスペアナの性能概要。同社ではこれを用いて発見できない信号であれば、他社の製品を用いても現時点では見つけられないほどの性能を実現したと説明している

なお、同オプションは160MHz帯域幅に対応した「N9030A-RT2」と、85MHz帯域幅に対応した「N9030A-RT1」の2つが用意されており、価格はN9030A-RT1が71万7213円(税別)、N9030A-RT2が102万4590円(税別)となっている。既存のPXAユーザーへの販売を行っていくほか、PXAに同オプションを添えた形の新規インストールについても、初年度で200台を目指すとしている。

今回のリアルタイムスペアナの説明動画