宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月27日、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」における船外実験プラットフォームのポート共有実験装置(MCE)ミッションの1つとして実施した「EVA支援ロボット実証実験(REX-J)」において、テザー(紐)制御によるロボットの空間移動技術の実証に成功したことを発表した。

REX-Jは、宇宙飛行士の船外活動(EVA)を支援・代行するロボットの実現を目指し、実現のために必要な「空間移動技術」の要素技術を実証実験するミッションで、2012年7月21日(日本標準時)に種子島宇宙センターから「こうのとり」3号機/H-IIBロケット3号機によって打ち上げられ、同年8月に初期機能確認を実施、10月より本格的な実験運用が行われている。

今回の実験では、ロボットに内蔵したロボットアームとロボットハンドを用いて、テザー先端のフックをハンドレールに取り付け、4本のテザーで支持し、テザーの長さを制御してロボットを移動させることに成功した。これにより、世界で初めてロボットの自己取付けテザーによる移動が技術的に可能であることが示され、小型のロボットで大型構造物上を空間移動する方式の軌道上確認と構成要素の特性データを取得するというミッション目的を達成することができたとJAXAでは説明している。

ポート共有実験装置(MCE)とREX-J ロボット実験装置 (c)JAXA

なお、JAXAでは今後REX-Jでは、ロボットアームの特性を評価するために、MCE外部にロボットアームを伸展させる実験やロボットアーム先端のカメラで「きぼう」周辺の画像を取得するなど、今後の宇宙ミッションに応用可能な技術実験を実施する予定だとしている。

伸展式ロボットアームによるテザー取り付け。テザー先端のフックをロボットハンドで把持したあと、伸展式ロボットアームを制御しハンドレールにフックを取り付ける (c)JAXA

テザーによるロボット本体移動。REX-Jでは、4本の支持テザーのうち3本の長さを制御する(左側2本を伸ばしながら右側の1本を縮める)ことによってロボット本体が右側へ移動していく (c)JAXA