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日本アイ・ビー・エム株式会社 システム製品事業 ATC.Linux/OSS&CloudSupportCenter Systems & Technology エバンジェリスト - Linux/OSS 新井真一郎氏 |
運用管理の効率化やシンプル化、災害対策やコスト削減などのニーズに対応するため、仮想化環境への移行を実施、検討する企業が増えつつある。しかし、導入の複雑さやコストに関する不安から、いま一歩、移行に踏み切れない企業も少なくない。
そのような状況下、コスト低減や柔軟性の高さから注目を集めているのが、Linuxカーネルに搭載されているオープン・ソースの仮想化ハイパーバイザ「Kernel-based Virtual Machine」(KVM)だ。
このKVMについて新井氏は、「KVMの大きな特徴として、導入コストとランニングコストのどちらも低コストで実現できるということが挙げられます。また、KVMを採用している、レッドハットの仮想化統合管理ツール『Red Hat Enterprise Virtualization』(RHEV)がバージョンアップによって日本語化に対応したり、当社が提供する『IBM Flex System Manager』を用いたりすることで、汎用性が保障されます」と語る。
KVMはOSS(Open Source Software)であるため、オープン性を活かした柔軟性が特徴の1つとして挙げられる。新井氏によると、ベンダーロックインを避けたい日本企業の"内製化"の流れに、OSSがマッチしているのではないかということだ。
「これまでは、"1社のベンダーに任せたい"と考える企業が割合として多かったのですが、最近では、逆の戦略を考える企業が増えてきています。仮想化の導入や災害対策などが影響し、日本市場の事情が変化してきているのでしょう。KVMはOSSであるためオープン性が高く、高い可能性を秘めています。コストの面だけでなく、リスク分散や将来性などを考慮しても、KVMを選ぶという考え方が広がったと思います」
仮想化プラットフォームの混在環境にも対応するKVMのメリット
注目したいのは、KVMが"移行"だけでなく"導入"にも向いているということだ。
「KVM稼働の管理ツールであるIBM Flex System ManagerにはKVMのインストール機能等が搭載されているため、KVMを使う際にLinuxの専門知識がなくてもブラウザベースでハイパーバイザの展開が可能です。そのため、初めてKVMを使うという方にも導入しやすくなっています。また、特徴として、混在環境でも使用可能です。例えば、VMwareユーザーは、KVMを追加するという形で使うこともできます。VMwareとKVMの共存ということですね。KVMをVMwareに追加した場合、システム構成検証(POC)でも、開発はKVMを用いたRHEVで行い、本番はVMwareを使うといったこともできます。このような使い方でシステム全体のコスト低減を検討する方が増えています」
このように聞くと、KVMひいてはOSSが良いことばかりのように思えるが、考えられるリスクなどはあるのだろうか。
「OSSに対するリスクや不安を感じている利用者は少なくありません。リスクやその解決法は各ケースによって違うので一概には言えませんが、当社としては、移行のしやすさや利便性とあわせて、仮想化におけるリスクについても知っていただきたいと考えています。リスク等については、お客様から相談を受け、逆に気づきを得ることなどもあります。リスクについて正しく理解し、OSSで仮想化を実現していただければと思います」
組み合わせることで生まれるコスト削減効果
新井氏は、仮想環境移行・構築に際して最大の関心事の1つとなるコスト削減について、「当社では2012年4月に、サーバやストレージ、仮想化などをあらかじめ統合、最適化したシステム『IBM PureFlex System』、ミドルウェアを搭載したプラットフォーム『IBM PureApplication System』など、『PureSystems』を発表しています。これには、コンピュート・ノード(サーバー)、ストレージ、ネットワークを1つの環境として提供する『IBM Flex System』が構成要素として組み込まれており、これらとKVMを組み合わせることにより、さらなるコスト削減が実現できます。コスト面において導入に踏み切れない企業にとっても、条件に見合うソリューションを提案することができます」と力強く語っている。
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2月6日(水)に開催される「マイナビニュース仮想化セミナー【Day1】コスト削減とリスクヘッジを実現する今後の仮想化環境 ~Red HatとIBMが提供するローリスクなOSSの活用~」では、新井氏も登壇する。当日は、ここでは紹介できなかった、災害対策や障害対策に関するヒントも披露される予定なので、"新たな一手"を考えているユーザーはぜひご参加いただきたい。