東北大学は1月24日、山形大学、新潟大学、放射線医学総合研究所(NIRS)、理化学研究所(理研)との共同研究により、福島第一原子力発電所(福島第一)の事故に伴う警戒区域内に残された牛における人工放射性物質の体内分布を明らかにしたと発表した。
成果は、東北大 加齢医学研究所の福本学教授を中心とした、同大の農学研究科、理学研究科、高等教育開発推進センター、歯学研究科、山形大学、新潟大学、NIRS、理研の研究者らの共同研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、1月23日付けで米オンライン科学誌「PLoS ONE」に掲載された。
福島原発の事故によって環境中に放出された大量の放射性物質が、ヒトをはじめとする生物へどのように影響するかが懸念されているが、今回の研究は、そうした放出された放射性物質の体内動態と内部被ばく線量を評価するための基本データを得ることを目的として行われた。
具体的には、福島第一から半径20km圏として設定された警戒区域内に残され、2011年8月29日から11月15日の間に安楽殺された、川内村と南相馬市の79頭の牛について臓器別にγ線を放出する放射性物質の放射能濃度を計測。その結果、すべての臓器でセシウム-134とセシウム-137の放射能がほぼ1:1の濃度で検出された。
さらに、半減期の比較的短い放射性銀110mが肝臓に、テルル129mが腎臓に特異的に集積していることも判明。回帰解析の結果、臓器中の放射性セシウム濃度は血液中の放射性セシウムに比例しており、骨格筋で最も高く、血中の約21倍だった。
また、各臓器別に放射性セシウム濃度を比較すると、臓器によらず母親に比較して胎児で1.2倍、仔牛で1.5倍だった。放射性セシウムの放射能濃度は牛の捕獲場所と餌に依存していた。
なお、今回の報告に関して研究グループは、福島第一の事故に関連して警戒区域内に残された牛の放射性物質の体内分布に関する系統的な研究成果だ、と説明している。