サーバ統合や仮想化技術、クラウドコンピューティングという昨今のITの潮流は、ITとビジネスの可能性を大幅に拡げることとなった。しかしながらその一方で、ITインフラの複雑化などにより、パフォーマンスの問題や、管理、可視化という新たな課題も生まれており、世界中の企業は効率性と弾力性(継続性)を求めながらコストと複雑性とのバランスを模索しているのである。

そうしたなか、これらの課題解決のヒントを示すべく、「仮想化・クラウド構築の"鍵" 『アプリケーション配信』『管理』『可視化』『高速化』『冗長化』の解決策 あなたのネットワークを次のレベルへ」と銘打ったセミナーが11月30日に開催された。本稿では、その模様を簡単にご紹介しよう。

多様化するITインフラのパフォーマンスを向上する

リバーベッドテクノロジー 代表取締役社長のティム・グッドウィン氏

最初のセッション「今、企業に必要なインフラ基盤とリバーベッドソリューション」に登壇したのは、リバーベッドテクノロジーの代表取締役社長、ティム・グッドウィン氏だ。同氏は、ビジネスのスピードが加速する現状を踏まえ、経営視点から見るITインフラへの投資ポイントとリバーベッドテクノロジーの提供ソリューションについて解説を行った。

ティム氏はまず、成長を続ける同社の概要について紹介。「当社は『ITパフォーマンス企業』であり、ITインフラのパフォーマンスをよりよくするためのあらゆるソリューションを提供する」と訴えた。

リバーベッドテクノロジーは、WAN高速化ソリューションを始めとして、仮想化ロードバランサーやクラウドバックアップゲートウェイなどのソリューションを展開している。

「このようなユニークなラインナップは他社にはない。とりわけクラウドや仮想化に最適なソリューション群を用意している。我々の製品に対するニーズはかなり増えてきており、現在は世界中で19,000社の顧客を抱えている」とティム氏。

アマゾンがグローバル展開しているクラウドサービス、AWS(Amazon Web Services)でも、唯一のロードバランサーの選択肢として使われているのがリバーベッドテクノロジーの「Stingray」だ。他にもStingrayは、様々なクラウド事業者で採用されているという。

ティム氏は言う。「ITインフラが多様化したことで、5年前には存在しなかったニーズも生まれてきている。当社は、他社には真似の出来ないような特許も有しており、これからビジネスはますます伸びていくことだろう」

またティム氏は、デバイスの多様化などによってWANに対するトラフィックが急激に増えている現状についても言及。

「企業ユーザーからも『常にインターネットに接続していたい』という要望が高まっている。これからは、"どこからでも"、"どの端末でも"、"どのアプリでも"ITを活用するという時代になるだろう。こうした"新IT時代"のアプリによるWAN越しのトラフィックは爆発に増加し続けることになる」(ティム氏)

このような一連の流れを受けてティム氏は、「当社のWAN高速化ソリューション、そしてそれ以上に実績のある優秀かつ豊富な製品ラインナップが効果を発揮するのは間違いない。世界中のITベンダーとの深い協業関係を強みに、日本の企業のITをビジネス向上に導くようサポートしていきたい」と主張してセッションを締めくくった。

ネットワークと仮想環境をまとめて可視化するユニークなソリューション

リバーベッドテクノロジー セールスマネージャーの伊藤信氏

続いて登壇したのは、リバーベッドテクノロジーのセールスマネージャー、伊藤信氏だ。同氏は、「WANが劇的に変化する!VMware VXLAN可視化とキャプチャリングソリューションによるパフォーマンス管理」というテーマの下、WANを劇的にパフォーマンス改善できる同社のソリューションを日本でのユーザー導入事例を交えて紹介した。

講演の冒頭で伊藤氏は、「ネットワークの可視化、仮想領域の可視化についてよく考えたい。クラウドでの制約はあるのか、あるとすればそれをどう破ればいいのかという点も重要だ」と問題提議を行った。

データセンターは進化を続けており、仮想化により一台のサーバーに集約することで管理コストも低下している。昨今ではネットワーク仮想化(SDN)などの技術を駆使した仮想データセンターも現れている。こうした集約の流れは、ハードウェアと電力、土地のコストを下げる一方で、データセンター・ネットワークのパフォーマンス管理をいかに適切に行うかといった新たな課題も生み出しているのである。

そこで注目されているのが、ネットワーク管理とアプリケーションのパフォーマンス監視を同時に行うことができるリバーベッドテクノロジーのユニークなソリューション「Cascade」だ。

「ネットワークが健全に動いていれば、アプリケーションもスムーズに提供することができる。これまではアプリケーションとネットワークの管理チームは別々に存在しているのが主流だったが、Cascadeを導入すれば一体となることができる」(伊藤氏)

Cascadeの機能は、サービスモニタリング、ユーザー体感レスポンス監視、挙動解析、トランザクション識別、ディペンデンシーマッピング、パケットキャプチャ、解析と幅広い。これにより、広範囲にカバーしながらインテリジェントに次のアクションを導くことができるのである。また、トラブルシューティングに優れている点も見逃せない。

伊藤氏は言う。「製品が重要なのではなく手法が重要なのだ。ネットワークが可視化できていなかったり、アプリケーションの利用状況が把握していなかったりすれば、問題を未然に防ぐことはできない。セキュリティに関しても、攻撃者はいままでのフィルタリングではすり抜けることができるのをわかっていてウイルスを送るようになっている。これがあらかじめ可視化されていれば、通常はあり得ないパケットが通過した時点で発見することができるのである」

Cascadeは、VMware VXLANにも対応しおり、仮想環境の可視化にも配慮がなされている。

仮想化について伊藤氏は、「多くの企業の間でようやく仮想化がインプリメントされてきたという印象を持っている。完全仮想化を考える企業も出てきており、データセンターだけでなく拠点でも仮想化が進むことだろう」との見解を示した。

さらに伊藤氏は、ロードバランサー製品であるStingrayを国内のクラウド事業者が軒並み採用していることについて紹介。「中にはサーバーの台数を50%減少しつつ、パフォーマンスを向上した事例もある」とその効果の程を示した。

WAN高速化がもたらすさまざまなメリットとは

リバーベッドテクノロジー シニアテクニカルコンサルタントの寺前滋人氏

最後の講演「『WAN+アプリケーション』高速化テクノロジーの最前線 ―最新RiOSで実現するSteelheadのWAN高速化とQoSでのアプリケーション高速化と制御―」に登壇したのは、リバーベッドテクノロジーのシニアテクニカルコンサルタント、寺前滋人氏。講演では、WAN高速化市場でナンバーワンの地位にある同社でコンサルタントを務める同氏が、WANとアプリケーションを同時に高速化するテクノロジーを分かりやすく解説した。

寺前氏はまず、リバーベッドテクノロジーのWAN高速化ソリューション「Steelhead」の主な機能について紹介した。その内容は以下の通りである。

1 帯域最適化 : データストリームライニング

これは、重複するデータを排除する機能だ。クライアントからファイルのリクエストがあり、サーバーがリクエストに対してファイルの送り出しを行う際には、Stealheadがデータの中身を100B単位に切り分けて自身のキャッシュで確認を行う。そして送っていないデータのみを送り出し、パケットの"設計図"をクライアント(拠点側Stealhead)に送るのである。クライアントは設計図を元にしてファイルを構築し直して実クライアントに送るという仕組みとなっている。

2 帯域最適化 : QOS

重要なコンテンツとアプリケーションを優先してネットワーク帯域を提供する。音声やビデオなどの他のアプリケーションに対して帯域幅を解放することにより、パフォーマンスを向上させることができる。

3 アプリ高速化 : トランスポートストリーミングライニング

WANの間はStealhead同士で結び、ack待ちの排除などやり取りするTCPの数を減らすといった"TCPの限界を克服"する機能である。

4 アプリ高速化 : アプリケーションストリームライニング

こちらは"アプリケーションプロトコルの限界を克服"する機能だ。他社製品と最も違うのは、WAN上のラウンドトリップ時間を65~98%も削減できるという点である。これにより、アプリケーションのスピードと体感速度の大幅な向上を実現している。

リバーベッドテクノロジーでは現在、仮想版やクラウド版のStealheadにも注力しているという。

このようなSteelheadによるWAN高速化によって企業は、「モビリティ/BYOD」「ビデオソリューション」「アプリケーション/SaaS」「トラフィック優先制御(QoS)」「災害復旧」「IaaS/Cloud」といったことが実現できるのである。

「どんな環境にも適応できるようなラインナップを用意している」と寺前氏は会場に向けて訴えかけ、セミナーの幕を閉じた。