北海道大学(北大)は12月6日、鈴木クロスカップリング反応などに利用され、医薬品や液晶などの重要な原材料となる有機ホウ素化合物の安価・簡単・安全な新しい合成方法「シリルボラン法」を開発したことを発表した。

同成果は、北海道大学大学院工学研究院・フロンティア化学教育研究センターの山本英治博士研究員、泉清孝工学部4年生、伊藤肇教授らによるもので、詳細は米国化学会誌「J.Am.Chem.Soc.」に掲載された。

有機ホウ素化合物は、2010年のノーベル化学賞の受賞対象となった鈴木カップリング反応で用いられる重要物質で、医薬品や液晶、有機EL材料などの高付加価値化合物を合成することができる。しかし、有機ホウ素化合物を合成するためには、従来はパラジウムなどの高価な重金属触媒やリチウムなどの発火性金属が必要(重金属触媒法)で、コストや安全面で問題があった。

従来用いられてきたホウ素化反応で用いられてきたホウ素を主に含有するホウ素化剤の場合、上述のとおり重金属触媒が必要となっていたが、今回研究グループでは、これはホウ素化剤の反応性が低いためであるとの考えから、より高い反応性をもち、重金属触媒を必要としない新しいホウ素化剤の探索を実施した。

実際にさまざまなホウ素化剤や活性化剤の組み合わせを検討したところ、ホウ素化反応剤としてこれまで使われたことのない、ケイ素を含むホウ素化合物「シリルボラン」と、安価な塩基性活性化剤を組み合わせた場合において、ホウ素化反応が効率良く進行することが見出された(シリルボラン法)。

同反応は、これまでのホウ素化剤を用いた場合に必要とされていた、高価な重金属触媒を必要としないほか、従来法に比べて多くの種類の有機ホウ素化合物を合成することができたという。

また、塩基性活性化剤は従来のパラジウムや白金といった重金属触媒に比べてコストが約1/20であるため、有機ホウ素化合物の合成コストを大幅に下げることが可能なほか、同反応は操作が簡便かつマグネシウムやリチウムなどの発火性の化合物を使わないため、安全あり、反応速度も早いことから、有機ホウ素化合物を用いて作られている医薬品や液晶材料等など最終製品のコストダウンや開発期間の短縮につながることが期待されると研究グループではコメント。さらに研究から、ケイ素を含むホウ素化合物の新しい性質が発見されたことから、これを応用した別の新たな反応を開発へとつながることが期待されるとしている。

従来の有機ホウ素化合物合成手法(上)と今回開発された合成手法(下)