富士経済は、本年5月から7月にかけて、国内のセキュリティ関連の機器・システム、サービスの市場を調査し、その結果を報告書「2012 セキュリティ関連市場の将来展望」にまとめ発表した。

この報告書では、映像監視、アクセスコントロール、イベント監視・通報、家庭向け防犯、防災・危機管理、自動車・ITSの6分野26品目のセキュリティ関連の機器・システムと7つのセキュリティサービスの市場を調査し、この市場をビルや店舗、住宅などシーン(場面)別に分析した。また、セキュリティ関連市場の対象外であるが、東日本大震災以降注目される防災関連システム・サービスの動向も合わせて調査している。

調査によると、2011年は東日本大震災やタイの大洪水の影響を受けて部品や部材の調達が滞り、自動車分野をはじめとする一部品目で生産に支障が出たことから、機器・システム市場は縮小したものの、サービス市場は、震災以降安否確認に対するニーズが高まっており拡大した。

国内セキュリティ関連市場 資料:富士経済

2012年は企業の設備投資が回復に向かっており、機器・システム、サービス市場共に拡大が見込まれ、そして、2015年は、企業の情報セキュリティ強化ニーズの拡大により、市場は順調に拡大すると予測されている。特に、機器・システム市場は特に監視カメラを中心とした映像監視や、入退室管理システムを中心としたアクセスコントロールの拡大が期待され、また、サービス市場は高齢化社会の進展を背景に見守りサービスに対するニーズが高まっており、今後も拡大が予測される。

中長期的にはビルや住宅の新設着工件数の伸び悩みにより新築時の大幅な需要拡大は期待できないという。サービスは既築施設がメインターゲットとなるため、新設着工件数の影響を受けにくいものの、機器・システムは新築時の導入が多く、今後の更なる市場拡大のためには、既築リニューアル需要の確保、未導入施設の開拓強化が重要となる。

監視カメラはアナログカメラとIPカメラに大別され、アナログカメラは導入の簡便さや導入費用の安さなどが強みであり、IPカメラはシステムの柔軟性の高さや各種セキュリティシステムの連携の取りやすさが強みとして挙げられる。これまではアナログカメラが中心であったが、メーカーもIPカメラへのシフトを鮮明にしており、性能向上や各種サービスの普及などによりIPカメラ市場が急拡大している。アナログカメラは価格が安く使い慣れているユーザーも多いことから、完全に駆逐されることは考えにくいが、2013年頃からアナログカメラの中でも従来のCCTVカメラよりも高画質なHD-SDIカメラの展開が予想され、利便性やサービス展開などによって今後の動向が変わる可能性もある。

しかし、中長期的にはアナログカメラの市場縮小とIPカメラの市場拡大は進み、金額ベースでは2013年に、数量ベースでも2015年にはIPカメラの実績がアナログカメラを上回ると見られる。なお、世界市場においてはIPカメラの市場は2011年に25億ドルとなり、中国をはじめとする新興国などの堅調な建築投資需要を受け、年率10%を超える成長が見込まれ、2015年には40億ドルが予測される。

国内セキュリティ関連市場(監視カメラ) 資料:富士経済

入退室管理システム(非接触カード方式)は、2008年のリーマンショックにより2009年は大幅に縮小したが、2010年から回復傾向が見られ、2011年の市場は拡大した。主な需要先であるオフィスビルや工場などはリプレイス需要が安定しているほか、企業のセキュリティの重要性への認識が高まっており、中小企業での需要も顕在化しつつある。

国内セキュリティ関連市場(入退室管理システム(非接触カード方式) 資料:富士経済

犯罪や災害から住宅や家族、財産などを守るホームセキュリティサービスは高所得者層を中心とした戸建住宅向けの需要が高かったが、中間所得者層をターゲットにサービス内容や料金プランの多様化が進み、市場が拡大している。既築戸建住宅の導入が多いが、大手ハウスメーカーや賃貸住宅事業者との提携により、新築時や集合住宅でもホームセキュリティサービスが導入されるケースも見られつつある。今後は、普及が遅れていた集合住宅向けの需要開拓と、潜在需要の大きい高齢者世帯の増加に伴って市場が拡大し、2015年は1,000億円を超えると予測される。

国内セキュリティ関連市場(ホームセキュリティサービス) 資料:富士経済

高齢者向け見守りサービスは主に一人暮らしの高齢者を対象としたサービスで、一人暮らしの高齢者世帯が急増していることを背景に市場が拡大している。緊急通報サービスは、緊急事態に陥った時に端末ボタンを押すと救急や医療機関、家族などに通知されるサービスで、2011年に高齢者住まい法の改正により高齢者向け住宅での設置が義務付けられ、今後高齢者向け住宅での需要拡大が予測される。

国内セキュリティ関連市場(高齢者向け見守りサービス) 資料:富士経済