富士通研究所、Fujitsu Laboratories of America、富士通の3社は、将来の長距離、都市間の光ネットワークに向けて、サービスを中断することなく、光ネットワーク資源の構成を動的に変更し、利用効率を高める技術を開発したと発表した。同成果の詳細は、9月16日から20日までオランダ アムステルダムで開催されている国際会議「European Conference on Optical Communications(ECOC) 2012」にて発表される予定。

クラウド型サービスや、高速モバイル端末の普及、そしてセンサネットワークなどの活用によるM2M(Machine to Machine)型通信など、ネットワークを活用するシーンが増えているが、それを支えるコアネットワークにおいては、光ファイバネットワーク技術により、1チャンネル当たり100Gbps級システムの実用化が始まっており、今後、400Gbpsを超える伝送システムの提供が予定されている。これらの大容量化と同時に、オンデマンド型で提供されるサービスに向けた大容量通信経路の提供や、大規模災害時における迅速な迂回経路の提供、動的に経路を再配置するための最適経路選択といった柔軟なネットワーク機能を、通信ノードでの消費電力の増加や、過剰な機器配置を必要とせずにエンドユーザに対して提供する必要があるが、現在の光送受信機、光スイッチノードには装置内で用いる光部品、電子部品などの制約により、通信に用いる光波長や帯域、変調方式、通信経路が自由に設定できないため、新規回線の開通には、人手による配線のつなぎ替えや、新たな装置の導入が必要となっていた。また、ネットワーク運用中に光波長の経路が頻繁に変更されることで、初期設定時には、ネットワーク利用効率を最適にするために割り当てられていた光信号の配置に、断片的な未使用領域 (フラグメンテーション) が発生するが、この未使用領域によって、新規回線の開通に必要となる光ファイバー通信経路・帯域割り当てが出来なくなり、伝送装置の利用効率が下がるという課題があった。

今回の研究では、サービスを中断することなく、光ネットワーク資源の構成を動的に変更し、利用効率を高めることを目的に主に2つの技術を開発した。1つ目は「ネットワークの構成をソフトウェア上で変更可能なフレキシブル光ノード(光送受信機、光スイッチ)で、光送受信機にデジタル信号処理技術を採用することで、伝送方式をソフトウェア的に変更可能とする「ユニバーサル送受信機」構成とした。これにより、長距離伝送向けユーザーに対しては、長距離伝送に適した、雑音に対する耐性の高い変調方式で比較的帯域幅の広い伝送方式に設定できるようになるほか、短距離伝送向けユーザーに対しては、短距離伝送に適した、雑音に対する耐性は高くないものの、周波数利用効率の高い伝送方式に設定することが可能となった。

さらに光スイッチノードについては、通信帯域幅が変更可能で、複数の通信経路が選択可能な光スイッチ技術により、通信経路の設定をソフトウェア的に設定することが可能であり、これらを組み合わせることで、1つの光送受信機を複数のユーザー間で共有し、ユーザーの要求に応じて柔軟に設定、組み合せ可能となるフレキシブル光ノードを実現した。

フレキシブル光ノード技術を用いた光ネットワーク

2つ目は「波長デフラグメンテーションによる、ネットワーク運用中での波長資源の利用効率向上」技術で、光波長の断片化された領域を、連続した領域に集約することで、大容量データへ割り当て可能な帯域を確保するデフラグメンテーションアルゴリズムを適用したネットワーク制御方式を開発することで実現した。

具体的には、フレキシブル光ノード装置構成を用いて、断片化された光波長資源を、400Gbps級の広帯域信号に割り当て可能なサイズの波長帯域に、ネットワーク運用中に連続的に集約。生成された波長帯域に、適切に設定された光信号を収容することで、波長資源の利用効率を向上する。実際に試作した4台の光スイッチノードが存在するネットワーク環境においては、サービスを中断することなく、デジタル信号処理技術を用いる100GbpsのDP-QPSK光信号の移動を行う、デフラグメンテーション技術が実証された。このデフラグメンテーションによって使用可能となった信号帯域を活用することで、光ネットワークの通信容量を40%改善することが可能になるという。

デフラグメンテーションの効果

なお3社では、今後は400Gbps級の次世代インタフェースの標準化ならびに製品化に向けて、ハードウェアの開発、およびネットワーク管理システムの研究開発を進めていくとしている。