京都大学は9月14日、宇宙プラズマが発する電波の「プラズマ波動」環境を計測する電波観測装置を、従来のA4用紙サイズからマッチ箱サイズまで小型化することに成功したと発表した。
成果は、京大 工学研究科 博士後期課程学生の福原始氏、同・工学研究科学生の石井宏宗氏、同・岡田聡氏(現・三菱電機株式会社)、同・生存圏研究所の小嶋浩嗣准教授、同・山川宏教授らの研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、9月14日付けで英国科学誌「Measurement science and technology」でオンライン掲載された。
宇宙空間は、電離気体のプラズマで満たされている。通信衛星や気象衛星、国際宇宙ステーションも、この宇宙プラズマの中を飛翔している。この宇宙プラズマの中では、それを構成している電子やイオンの動きによってプラズマ波動と呼ばれる電波が発生している。宇宙プラズマの中の電子やイオンはお互いに衝突することなく、プラズマ波動を通じてエネルギーを交換している仕組みだ(画像1)。したがって、プラズマ波動を観測することで、宇宙空間で発生している現象を知ることができるのである。
京都大学では、人工衛星に観測器を搭載してプラズマ波動を宇宙空間で観測する研究を、国内研究者の中心として、日本の科学衛星黎明期から推進してきた(画像2)。観測装置「プラズマ波動観測器」は、感度の高い電波受信器であり、これまでの機器は面積でA4用紙サイズ(210mm×297mm)程度だった。
今回、研究グループはプラズマ波動観測器専用のアナログチップ(ASIC)を独自に設計・開発することで、同観測器を45mm×50mmというマッチ箱サイズにまで小型化することに成功した(画像3)。
従来のA4サイズの観測器がマッチ箱サイズにまでに小型化されたことにより、宇宙空間に多数の観測ポイントを設置したり、宇宙ステーションなどの構造物に複数貼り付けたりすることが可能になった。
これにより、従来の人工衛星のように空間で1点でしか計測できないという欠点を克服することができ、今後人類が宇宙空間の利用を拡大していくにあたってその環境をモニターする装置として活用することができるようになったのである。
現在、実際に同機器を使用した宇宙空間での観測を行うためのロケット実験が計画中だ。