シトリックス・システムズ・ジャパンは、7月17日と18日の2日間、都内のホテルで「Citrix iForum 2012 Japan」を開催し、シトリックスの最新ソリューション「モバイルワークスタイル」と「クラウドサービス」を紹介する。そして、17日のキーノートでは、米Citrix Systemsプレジデント兼CEO マーク・テンプルトン氏がキーノート講演を行った。なお、同氏が日本で講演を行うのは6年ぶりとなる。

米Citrix Systems プレジデント兼CEO マーク・テンプルトン氏

テンプルトン氏は冒頭、「どこでも仕事ができる、どこでも生活ができるというのが、シトリックスのイノベーションのコアになっている。これまで、仕事は有線LANで接続されたPCを使って会社で行うものだったが、最近はモバイルの時代で、個人のデバイスを利用し、ワイヤレスやクラウドを利用するようになった。そしてシトリックスは、仕事と生活をシームレスに移行できる環境に焦点を当てたいと思っている」と述べ、同社が注力するモバイル、クラウドの2つの分野について説明した。

モバイル分野では、モバイルワークスタイルに有効なソリューションとして、オンラインコラボレーションツール「GoToMeeting」、ファイル共有ソリューション「ShareFile」(日本では未提供)、7月12日に発表したCitrix CloudGateway 2、および最新の「Citrix Receiver」を紹介した。

CloudGateway 2は、シングルサインオン機能を提供し、アクセス管理を一元化するソリューションで、ShareFileのアカウントを自動的に作成する。

CloudGateway 2

そして、チーフ・デモオフィサーであるブラッド・ピーターソン氏がWindows PC、Mac Pro、iPad、iPhone、Android端末にインストールされたCitrix Receiverを使って、ShareFile上のファイルにアクセスできる様子をデモ。テンプルトン氏は、「Macでも、Android端末でも、好きな環境で好きなデバイスを選択して仕事ができる」と述べ、同社のソリューションを利用すれば、いつでも、どこでも、どんなデバイスでもアクセスできるモバイルワークスタイルが実現できる点をアピールした。

ブラッド・ピーターソン氏は、iPadは持ち運ぶには大きすぎるが、私はその問題を解決したと述べ、上着の大きな内ポケットからiPadを取り出し、iジャケットを自分で作ってみたと会場を笑わせた

ピーターソン氏は、Windows PC(左)、iPad(中央)、Android端末(右)でCitrix Receiverを使ってアクセスし、シトリックスのソリューションを利用すれば、どのデバイスでも同じ環境が利用できることをアピールした。なお、最新のCitrix Receiverでは、アプリケーションとSaaSのサービスが1つの画面に統合されている

また、ピーターソン氏は5月に発表したXenDesktopの新機能である「Remote PC」のデモも行い、XenDesktopのRemote PCを用いることで、オフィスにあるPCをリモートから使用できることを紹介した。

「Remote PC」で、Mac Proから富士通のウルトラブックにアクセス

そのほか、テンプルトン氏は、HDXの機能のONチップ化を進めていることを説明。これによって低価格化、および電話、ディスプレイ、テレビ、キオスク端末などの新しいデバイスにHDXの機能を搭載することが可能になるとした。

HDX Ready System-on-a-Chip

System-on-a-Chipを実現したNcomputingのデバイス

2つ目のテーマであるクラウドでは、テンプルトン氏は、同社のソリューションとして、Citrix CloudBridgeを紹介した。Citrix CloudBridgeは、パブリッククラウドをプライベートの延長として利用できるようにするもの。

最新のCloudBridge 2では、パブリッククラウドサービスがカタログ化され、ユーザーがボタンをクリックするだけで、希望のパブリッククラウドのプロビジョニングができるという。

CloudBridge 2

テンプルトン氏は、「世の中でこの方式で一番うまくいっているのがAmazonで、IaaSをクラウドの世界で行っている。CloudStackを使えば、みなさんもAmazonスタイルのクラウドサービスを利用できる」と語った。

CloudStackは、シトリックスが2011年7月に買収したCloud.comのクラウド管理ソフトで、同社のクラウド戦略のキーコンポーネント。ただ、同社は今年の4月、Citrix CloudStackを、Apache Software Foundationに寄贈したことを発表した。今後同社は、Apache CloudStackの商用版を提供していく。もともと同社は、OpenStackについてもサポートしていたが、今後はCloudStackに注力していくことになる。

今後はCloudStackに注力

これについてテンプルトン氏は、「OpenStackはわれわれの思うような進捗ができていなかった。そこで、シトリックスのすべての技術をCloudStackに持っていくことにした。Amazonスタイルのテクノロジーは今必要なのだ」と説明した。

そして最後に同氏は、今年の5月に発表した「Project Avalon」を紹介。Project Avalonは、既存のXenDesktop/XenAppをクラウドサービスに移行させるためのソリューション。

同氏は、「Project Avalonは、新しいテクノロジーの集合体であり、Windowsのデスクトップアプリケーションをクラウドサービスとしてデリバリーするためのプロジェクトだ。Project Avalonには、重要な3つの要素がある。1つは次世代のXenDesktopで、より簡単にセットアップ、管理ができるようになる。そして、第2はCloudStack上で展開されるということ。3番目はこれらの上で動作するCloud-Style Sevice Orchestrationで、既存のデスクトップアプリケーションをこの中に引き入れることができ、それを他のクラウド環境に移行することができる」と説明した。

「Project Avalon」

なお、Project Avalonのベータ版は今年の秋に提供されるという。