X線やガンマ線などの放射線に対して、鉛と同等以上の遮蔽(しゃへい)能力をもつ金属タングステンを混ぜ込んだ紙を、凸版印刷(本社、東京都千代田区)が開発した。鉛のように環境への悪影響がなく、加工もしやすいため、放射線に汚染された廃棄物の遮蔽や除染作業での防護服、放射線検査室の内装材などへの利用を見込んでいる。

タングステン粉末と樹脂を混練して作られた放射線遮蔽シートは、すでに他のメーカーによって商品化されている。凸版印刷は紙の製造工程で、タングステンの混入比率を紙の全重量の8割にまで高める技術を開発した。紙の標準仕様は厚さ約0.3ミリ、幅約50センチのロール形状。価格は50センチ四方で7,000-8,000円程度という。

放射線の遮蔽性能については、京都大学大学院の平岡眞寛教授と門前一・准教授の協力を得て確認した。このタングステン紙を3枚重ねると、医療分野で一般的に使われる0.25ミリ鉛板とほぼ同等の性能があるという。平岡教授らは、今年9月2-7日、奈良市で開かれる第12回放射線遮蔽国際会議で、今回のタングステン紙に関連した発表を行う予定だ。

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