国立天文台は6月1日、アルマ(ALMA)望遠鏡を用いて活動銀河ケンタウルスA(NGC5128)の中心部を撮影し、大量の塵の帯に隠された銀河の奥深くを写し出すことに成功したことを発表した。

楕円銀河であるケンタウルスAは、強い電波を放射する「電波銀河」の中としては1200万光年と地球にもっとも近い銀河として知られており、その中心部には太陽のおよそ1億倍の質量を持つ超大質量ブラックホールが潜んでいると考えられている。

また、可視光での観測では、その中心部には目立つ黒い帯が横たわっていることが確認できる。この黒い帯には大量のガスや塵、そして若い星が隠れており、それは巨大な楕円銀河と小さな渦巻銀河が衝突してできた際などにケンタウルスAに飲み込まれてしまった小さな銀河の残骸であると考えられている。

この黒い帯の中を見通すためには赤外線や電波を用いて観測する必要があり、今回の電波干渉計としてアルマ望遠鏡を用いた観測により、この黒い帯の内側を高い解像度および感度で見通すことに成功したという。

今回の観測では、アルマ望遠鏡は一酸化炭素(CO)分子が出す波長1.3mmの電波を観測した。CO分子を含むガスの雲がケンタウルスAの中を動いていくことで、CO分子が出す電波の波長にわずかなずれ(ドップラー効果)が生じ、銀河の中心より左側にあるガスは近づいてくる方向に、右側にあるガスは遠ざかる方向に動いていることが観測された。これは銀河の中をガスが回転していることを示したものであるという。

アルマ望遠鏡はチリ共和国の北部・チャナントール高原にて建設が進められており、2012年度中の本格観測の開始が予定され、2013年には全66台のアンテナが設置される計画。2011年からは、一部のアンテナを用いた初期科学観測が開始されており、今回のケンタウルスAの観測もアルマ望遠鏡の科学評価データとして観測が行われたものだ。

なお5月31日、アルマ望遠鏡の運用を行っている合同アルマ観測所は、次の観測シーズン(サイクル1)に向けた観測提案の公募を開始した。サイクル1の期間は2013年1月から10月までと設定されており、2011年9月から実行されている初期科学運用サイクル0に比べて2倍以上の数のアンテナ(直径12mアンテナ32台からなる「12mアレイ」、日本が製造した7mアンテナ9台と12mアンテナ2台からなる「アタカマ・コンパクトアレイ」)を観測に使うことが可能となるほか、アンテナ間隔も最大で約1kmに拡大され、解像度はサイクル0に比べて2倍以上向上するという。また、日本が建設を担当しているアタカマ・コンパクトアレイが追加されることで、従来以上に高画質な電波写真の撮影が可能になるという。

波長のずれを色で表現している。地球側に向かってくるように動いているガスは紫から暗い青色で、遠ざかるように動いているガスは明るい青色に色付けがされている。アルマ望遠鏡の画像と合成されているのは、チリ・ラシーヤ天文台のMPG/ESO 2.2m望遠鏡の広視野カメラ(WFI)で50時間以上かけて撮影された可視光画像。この画像には数千億の星が写っており、ケンタウルスAが全体として楕円銀河のような形をしていることがわかる((C)ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), T.A. Rector (University of Alaska Anchorage).Visible-light image: ESO)