立教大学と日本マイクロソフトは、世界で活躍できる人材育成を目指し、ビジネススキルと実践的なIT活用を統合した学生向けカリキュラムを共同開発し、2013年度から立教大学の学生向けに「考える技術・伝える技術」をeラーニングで提供すると発表した。

両者は、カリキュラムの共同開発にあたり、5月28日、教育連携協定を締結した。日本マイクロソフトによれば、これまでも学部や研究室単位での大学連携はあったが、大学全体の包括的な連携は今回が初だという。

教育連携協定に署名する立教大学 総長 吉岡知哉氏(左)と日本マイクロソフト 代表執行役 社長 樋口泰行氏(右)

協定に署名後、握手と交わす吉岡氏と樋口氏

今回の連携では、立教大学の商学教育の実績や近年の経営学部「BLP」等の教育の試みと、グローバルIT企業であるマイクロソフトの実務でのノウハウをもとに、ビジネススキルと実践的なIT活用を統合した学生向けカリキュラムを共同開発する。BLP(Business Leadership Program:ビジネス・リーダーシップ・プログラム)は、グローバル社会で活躍できる人材の養成を目的に作られた、立教大学経営学部経営学科のコア・カリキュラムだ。

共同開発する講座の概要

具体的には、2012年度、立教大学において、連続公開講座(「考える技術・伝える技術 ~立教型ビジネス基礎講座~」)を日本マイクロソフトの社員が講師となって実施したうえで、そのコンテンツを立教大学の監修のもと日本マイクロソフトがeラーニング化する。そして、立教大学は次年度からの本格実施に向けて本講座のカリキュラムの体系化を行うのと並行して、講座の実践の場として、日本マイクロソフトにおいて「立教型インターンシップ」(2012年度は3名)を実施し、学生が実際のビジネス現場で学ぶ機会を提供していく。

今後の日程だが、6-7月に立教大学にて、日本マイクロソフト社員により「考える技術・伝える技術」の連続公開講座を5日間開催。その後、8月から恒常的な講座として教育用件(教育目標と効果、教育内容、方法、成績の評価基準)を整備し、コンテンツをマイクロソフトのWindows Azure上に展開。2013年度からeラーニングとして提供を開始する。

今後のロードマップ

日本マイクロソフト 業務執行役員 文教ソリューション本部長 中川哲氏

日本マイクロソフト 業務執行役員 文教ソリューション本部長 中川哲氏によれば、今回のカリキュラムはすべてモジュール化されており、自由に組み合わせてカリキュラムを作成できるほか、あるモジュールだけを最新のビジネス環境に合わせてリプレースできることが特徴だという。具体的には、以下のようなセッション構成を採る。

なお、今回開発する講座による取得単位は、卒業に必要な124単位には加えない予定だという。

ビジネス基礎講座のセッション構成

立教大学 経営学部教授 総長室調査役の山口和範氏

今回の両者の連携の背景について、立教大学 経営学部教授 総長室調査役の山口和範氏は、「世界や社会とどうつながるのか、そして、大学を出たあときちんと仕事ができる人材を生み送り出し、社会とともに生きる力をどう育成するかが、今の大学教育における大きな課題だ。これを今の大学教育だけやるのは難しい。今回、マイクロソフト社と連携することによって、大学での専門知識に加え社会性を身につけ、組織活動がきちんとできる人材を作り出すことが可能になる」と説明する。

また、立教大学 総長 吉岡知哉氏は、「いろんな知識へのアプローチの仕方、まだ体系化されていない不確定なものをどうやって発見し扱っていくのか、知識と知識を結びつけてまったく新しいものを作り出していく技術や発想する力がリベラルアーツや教養にとって重要だ。今回のカリキュラムで求めているのは、人間が社会生活を営む上で重要な基礎的な技術だ」と述べた。

立教大学 総長 吉岡知哉氏

日本マイクロソフト 代表執行役 社長 樋口泰行氏

一方、日本マイクロソフト 代表執行役 社長 樋口泰行氏は、「大学教育のなかでどれだけ社会で役立つものを提供するかについては、実社会のニーズと連携することが、国際競争上重要だ。これに対してグローバルな民間企業である我々が役立つことができる」と述べ、同氏は、世界で活躍する人材育成に必要な要素として「教育環境」「スキル育成」「世界とのつながり」の3つを挙げた。

樋口氏が挙げた世界で活躍する人材育成に必要な要素とそれに対する日本マイクロソフトの支援策

今回の連携において日本マイクロソフトは、教育環境では、クラウドによるユビキタス環境とEESプログラムを、スキル育成では立教型ビジネス基礎講座を、世界とのつながりでは、インターンシップを提供する。

EES(Microsoft Enrollment for Education Solutions):初等中等高等教育機関におけるソフトウェア導入を、より少ないコストで、より効率的に管理するためのライセンス プログラムで、ユーザー数で必要ライセンス数をカウントし、契約期間におけるソフトウェアの利用料を支払う、マイクロソフトのサブスクリプション形式のライセンス。

本連携における立教大学のIT環境