タキイ種苗とお茶の水女子大学は、タキイ種苗が開発した苦味の少ない品種「こどもピーマン」(画像1)と苦味のある従来のピーマンの成分を比較したところ、「渋味」のポリフェノールの1種である「クエルシトリン(quercetin-3-rhamnoside)」(画像2)に、ピーマン特有の香気成分「ピラジン(2-isobutyl-3-methoxypyrazine)」が加わることで苦味が生じることが判明したと発表した。詳細な研究内容は、3月23日から25日まで京都女子大学で開催される「農芸化学会平成24年大会」で発表の予定だ。
食品に含まれる苦味にはさまざまなものがあり、例えばコーヒーに含まれる「カフェイン」やキュウリに含まれる「ククルビタシン」などは有名だ。そして、ピーマンは子どもが嫌いな野菜の代表とされることが多いが、その主な原因がピーマンに特長的な「苦味」であるといわれている。
しかし、このピーマンの苦味については昔からいわれてきたにもかかわらず、実はその成分については明らかにされていなかった。そこでタキイ種苗では、お茶の水女子大学の協力のもと、10年間かけて開発して2010年に同社が発売を開始した苦味の少ないこどもピーマンと、従来のピーマンとの成分を比較することで、苦味成分の解明を実現することにしたのである。
研究方法は、まず、苦味を呈する従来品種のピーマンと、苦味のないこどもピーマンの種子とヘタを除いてミンチにし、ナイロン濾布で絞るところからスタート。そして絞り汁を遠心分離し、液体クロマトグラフィーにて分析した。その結果、従来品種のピーマンにとても多く存在する成分(ポリフェノール類)が数種類検出されたというわけだ(画像3)。
さらに、それらの成分の内の1つが苦味に関与する物質であると考察されたため、これを単離して分析。その結果、同物質がクエルシトリンであることがわかったのである。
クエルシトリンはドクダミに多く含まれるポリフェノールの1種で、脂肪細胞の脂肪蓄積を抑制するほか、高血圧抑制、抗うつ作用、血中中性脂肪の上昇抑制、血流改善、関節炎予防効果などの効果を持つ。
しかしこのクエルシトリン、正確には苦味ではなく、似て非なる「渋味」を呈するものだったのである。そこで、さらに食味評価を実施。その結果、クエルシトリンの持つ渋味に、ピーマン特有の香気成分である「ピラジン(2-isobutyl-3-methoxypyrazine)」が加わることで、ピーマンの苦味として感じられることが判明したというわけだ。
ちなみに、こどもピーマンは子どもに人気で、約80%の子どもが「苦くない」とアンケート調査で答えているという。アンケートには「普通のピーマンは食べられないが、こどもピーマンは食べられる」と回答する例も多くあったそうである。
さらに、栄養価の面でも子どもピーマンは従来のピーマンよりも高く(画像4・5)、「子どもがピーマンを食べてくれない」というお母さんにとっては悩みを解決できる上にさらに健康面でも優れた野菜だ。
タキイ種苗では、今回の研究成果を基に「苦くないピーマン」=こどもピーマンとして販売や栽培を広げると共に、新しい料理や利用方法の開発、さらに次の新しいピーマン品種の育成を今後とも積極的に進めていくとしている。