JNCは、セシウム汚染水を対象とした、セシウム(安定同位体)の連続分離プロセスを開発した。

同社が2011年12月に発表した際は、ラボスケールでのバッチ式分離技術だったが、東日本大震災で被災した原子力発電所の汚染水処理を念頭に、さらに実用化に近づけ、ベンチスケールでセシウムの連続分離を可能としたという。

今回開発された技術は、セシウム汚染水にフェロシアン化物と塩化鉄を加え、弱アルカリ性とすることでセシウム結合磁性体を生成し、ドラム型磁気分離装置を主要機器としたシンプルなプロセスにより、セシウムを除去・回収するもの。

この技術の特長は、磁性体の除去・回収を、磁気を用いて遠隔操作で連続的に行なうことで、大量かつ迅速な汚染水の処理と、廃棄物量の低減が可能なことにあるという。

ドラム型磁気分離装置図

セシウム濃度10~200ppmの水溶液20リットルを用いたベンチスケールの試験では、セシウム結合磁性体を生成させる反応時間は3分で終了し、1分間あたり4リットルの処理速度で汚染水から磁性体を磁気分離。この試験ではセシウムが99.5%以上除去され、廃棄物量を汚染水の200分の1の体積に減少させることに成功した。

このプロセスはスケールアップが容易で、1時間あたり20平方メートルのセシウム汚染水の処理が可能なプロセスも考案しているという。

この技術は幅広く応用が可能であり、例えば、原子力発電所の汚染水からセシウムを除去するケース以外でも、放射能で汚染された土壌や瓦礫を洗浄した際に生じる汚染水などへの応用が考えられるそうだ。

今後は、東日本大震災により発生した汚染水処理のみでなく、あらゆる放射性セシウム汚染水の処理やモニタリングにこの技術を適用すべく、様々なスケールの試験機で実証実験を行ない、実用化に向けた検討を継続していく予定。