米Googleが1月末に発表した最新のプライバシーポリシーに対し、欧州連合(EU)が内容に目を光らせている。これまでは「Googleがサービスをスタートした後に当局が調べる」というパターンが多かったが、EUも今回ばかりは先回りしようと必死だ。欧州では発効が遅れる可能性も出てきている。

Googleは1月24日に、2012年3月1日から発効する新たなプライバシーポリシーを発表した。最大の変更は、これまで「Google Search」「Gmail」「You Tube」などの各種サービスでバラバラに収集していた個人情報を、サービスをまたいで1ユーザーの情報として収集し串刺しにする点だ。

これにより、60以上のプライバシーポリシーを統合できるため、「ユーザーにとってわかりやすくなるほか、サービスの利便性、関連性、精度、そして広告の質を高められる」というのがGoogleの説明だ。

しかし、これが発表されるやいなや壁にぶつかった。まずは米国だ。議員8人がGoogleに連名で質問状を送り、説明を求めた。Googleはそれに対する回答書を公開するとともに、パブリックポリシー担当ディレクターのPablo Chavez氏が公式ブログで「個人情報は引き続き非公開であり、Google Dashboardなどのツールを利用してユーザーが自分で個人情報を管理できること、他のサービスにデータを移す"自由"を尊重すること」などを強調した。

次に動いたのがEUだ。EUのArticle 29 Working Party(EUに加盟する27カ国のデータ保護当局を代表する団体)は2月2日付けでGoogleのCEOであるLarry Page氏宛てに手紙を送り、新しいポリシーがユーザーに及ぼす影響、EUのデータ保護法に違反しないかどうかを確認するまで発効を遅らせるよう要請した。そして、Googleが欧州で大きな拠点を持つフランスのデータ保護当局のCNILが調査を開始することを明らかにした。欧州の検索におけるGoogleのシェアは90%程度と言われており、影響力は大きい。

Googleは2月3日に回答書を公開、「すでにユーザー3億5,000万人に3月1日発効として告知をしており、これをずらすことは混乱を招く」とした。また回答書には、「新しいプライバシーポリシーはこれまでのアプローチを変更するものではないこと」「新たに収集する情報が増えるわけではないこと」などが列挙されていた。これらは先述の米国議員宛の公開書簡でも強調されていたポイントだ。同社は24日に発表する前にEU各国の当局に事前のブリーフィングを行っており、大きな懸念は聞かれなかったとも記している。

今後EUの出方が待たれるが、EUとしては慎重に進めることが予想される。これまで、Googleが「Google Street View」などの新しいサービスをスタートした後に、当局がプライバシーの点から調べるという風に後手に回ることが多かった。CNILはNew York Times紙に対し、「調査終了の期限は設けていない」とコメントしており、Googleが4週間後、予定通りに新ポリシーを発効できるかが危ぶまれる。