清水建設は、エレベータシャフト内のアスベスト対策工事の効率化と作業員のアスベスト曝露量の低減を目的に、アスベスト封じ込め材の吹付けロボット「SHAF-BOT」を開発。都内の超高層ビルで実証工事を行い所定の性能を確認したことを発表した。

リニューアル工事に伴うアスベスト対策工事では、「除去」か「封じ込め」または「囲い込み」のいずれかの対策工法が採用される。これまでは、除去工法が多くの工事で採用されてきたが、超高層ビルのエレベータシャフト内の作業では、封じ込め工法が工期・工費ともに有利になることから、同工法の採用を希望する発注者が増えている。SHAF-BOTはこうしたニーズを踏まえて開発したもの。

SHAF-BOTは、既設エレベータ搬器(エレベータのかご)の上に設置する。このため、装置の軽量・小型化を図り、重量は90kgに抑えた。また、軽量ゆえすべての駆動モータが80W以下になり、労働安全衛生規則の適用対象外になったことから、ロボットと作業員による協調作業も可能になった。これにより、ロボットのセンシング機能とベテラン作業員の目による品質のダブルチェックなどが可能になると言う。

「SHAF-BOT」。3次元形状計測センサと吹付け機構部が組み込まれた十字フレームおよび、レーザー距離計が搭載された設置架台から構成される

ロボット本体は、3次元形状計測センサと吹付け機構部が組み込まれた十字フレームおよび、レーザー距離計が搭載された設置架台から構成されている。

機能上の特徴は、エレベータ搬器を降下させながら、レーザー距離計によるエレベータの高さ計測と3次元形状計測センサによる壁面の凹凸形状計測を繰り返すことで、エレベータシャフト内の壁面形状全体の3次元データベースを構築できること。

一方、吹付け機構は、データベースから吹付け対象部位を認識しながら、封じ込め材を1m2当たり1.2kgずつ均一に吹き付けできる。吹付け能力は、凹凸のない壁に対して0.4m2/分となる。

作業手順は、始めにエレベータシャフトの最上部から最下部までエレベータ搬器を12m/分のスピードで降下させ、壁面形状認識システムにより壁面形状全体のデータベースを作成。続いて搬器を再び吊り上げ、吹付け機構が最上部から高さ0.9mずつ封じ込め材を吹き付けては、エレベータを順次降下させていく。

なお、設置架台と十字の垂直フレームは連結されており、壁面に対して架台自体が左右・前後方向に移動、さらには端部が吹付けノズルになっている水平フレームは垂直フレーム上を上下方向に移動するとともに垂直フレームを起点に回転する。これにより、吹付け対象部位とノズルとの距離と角度を適正に保ちながら、所定の吹付け厚を確保できる。

作業員は、ロボットが吹付け立面を1面吹き終えるごとに、ロボットの設置方向を次の吹付け立面に合わせて変えていく。

SHAF-BOTの採用により、人手による作業に比べ、工期と工費を20%、作業員のアスベスト曝露量を50%削減できる見込み。また、事前に壁面形状等のデータ入力、いわゆるティーチングが不要なことも大きなメリットとなる。

なお同社では、「同ロボットを武器に、ストックマネジメント事業の核となるリニューアル工事の受注拡大に取り組む」としている。