名古屋大学(名大)高等研究院の安益公一郎特任助教と基礎生物学研究所(NIBB)の長谷部光泰教授を中心とする研究グループは、植物ホルモンのジベレリンが植物進化の過程でどのように使われるに至ったかについて解明したことを発表した。同成果は、英国科学雑誌「Nature Communications」(電子版)に掲載された。
成長ホルモンであるジベレリンは植物の生長や生殖を制御すると知られているが、約4.5億年前に出現したコケ植物には存在せず、その後に誕生したシダ植物で初めて使われるようになったと考えられてきた。
今回、研究グループはシダ、コケ、イネの胞子(イネでは花粉)が出来る生殖過程を詳細に調査。その結果、この過程はこの3つの植物で似ているが、イネとシダはこの過程のスイッチを入れるためにジベレリンが必要であるのに対し、コケ植物はジベレリンなしでスイッチが入ることを確認した。
この結果は、本来ジベレリンはコケ植物に既に存在した胞子・花粉の生殖システムを促すスイッチとして、後のシダ植物グループの誕生に伴って登場したことを示しており、これにより植物ホルモンが植物進化の過程でどの様に出現し、用いられるようになったかが具体的なものとして明らかとなった。
研究グループでは同成果を応用することで、今後、植物の生長・生殖制御への道が開けるとの期待を示している。