9月23日・24日に新宿の工学院大学で「ETロボコン2011 東京地区大会」が開催された(画像1)。初日はAブロック42台、2日目はBブロック40台によってチャンピオンシップ大会進出を目指して熱いバトルが繰り広げられた。チャンピオンシップ大会は11月16日(水)にパシフィコ横浜で行われ、全国11地区大会の上位選手によって競われる。東京地区大会はA、Bブロックそれぞれの上位5位までと特別賞を加えた計12チームが参加する形になる。
画像1。ETロボコンはレゴ・マインドストームNXTを使用して、ソフトウェアの完成度(NXTの管理も重要だが)を競う組み込み技術者の育成をも目的としたコンテストだ。同じハードでも、ソフト次第でこうも挙動が異なるというのを見られるところが面白さの1つ |
ETロボコンは、国内の組込技術の初級技術者を中級技術者へのレベルアップを目的として開催されている、人材教育系ロボコンだ。全チーム「レゴ・マインドストームNXT」による平行2輪倒立振子型ロボット(走行体)を同一ハードウェアとして使用し、タイムを競うと同時にモデリング手法によるシステム(プログラム)の完成度で勝負する競技。
競技は、2チーム同時に走ってタイムを計測する。制限時間は2分。コースはインとアウトでレイアウトが異なり、インとアウトを入れ替えて2回走って、そのタイムの合計が走行競技の得点となる。コースは白地に黒地のラインが描かれており、走行体は光(赤外線)センサ1つでそれをトレースして走行していく。いわば、ライントレース競技的な一面もあるのである。
今年のコースの特徴は、前半がストレートと複数のコーナー、坂道のアップダウンで構成されたシンプルな「ベーシックコース」(画像2・3・4・5・6・7)となっており、後半に難所が集中して用意される形となった。ベーシックコースを通過すればその時点で完走ということになる。難所に挑んだ場合、仮に失敗してもボーナス(完走タイムから規定の秒数が引かれる)が入らないだけというルールだ。難所は昨年のようにスキップするようなルートは用意されておらず(「ET相撲」のみはスキップ可能)、手前から順にクリアしていかないとならない。
画像2。コースレイアウト全景。画面右上がスタート視点で、中央下のピンクの帯の部分がベーシックコースのゴール。ここまで来れば完走扱いとなり、後はどれだけ難所を成功させてボーナスタイムを稼げるか、という流れになる |
画像3。コースをスタート地点から撮影。ベーシックコースは意外と入り組んでいて距離があるのだが、速い走行体だとゴールまで30秒台で走ってしまう |
画像4。スタート地点。手前がアウトコース。ベーシックコース終盤ではコーナーの内側に入ることもあるが、外側を回る回数が多いため、インコースよりも前でスタートする |
画像5。ベーシックコースの中では難所となる、坂道。昇るよりも、下りでブレーキをかける時の方が難しいようで、不安定な挙動を見せる走行体もチラホラと見られた |
画像6。第1コーナー。スタートに成功して坂道をクリアした走行体なら、ここは難なくクリアしていく |
画像7。連続ヘアピンの2つ目。ここら辺はコーナーのRがキツイため、中にはコースアウトしてしまう走行体もある |
難所の種類は、インコースは「シーソー」(画像8・9)、「階段」(画像10・11)、「ガレージイン」(画像12・13)の3つ。アウトコースは「ルックアップゲート」、「ET相撲」、「ガレージイン」の3つ。シーソーは1回クリアする「シングル」がボーナスタイム10秒。そして、1度ガッタンといった後にバックしてガッタン、さらに前進してもう1回ガッタンと行く「ダブル」は20秒のボーナスタイムだ。階段は2段あって、2段上った後に一気にドスンと着地して完全にクリアすると15秒。両コース共通のガレージインは5秒だ。
画像10。インコース2つ目の難所の階段。実は、シーソーよりも難しいという意見も。勢いだけで2段を連続で行こうとすると転倒してしまうことが多い。1段上ったら一度速度を落として走行体を安定させ、それから2段目に挑戦すると成功率が高いようだ |
画像11。2段目を昇った直後。昇る時の段差に対して、降りる時は2段分なので、その分衝撃が大きい。降りて安定して走り出すまでは手に汗にぎるような状態である |
そしてアウトコースの「ルックアップゲート」(画像14・15)は今年初登場で、いわゆるリンボーダンスのようなもの。高さ235mm、幅320mmのゲートで、そのまま直進すると走行体の頭部が接触する低さ。それを後方斜め45度に走行体を傾けた体勢(転倒防止用の補助輪が降ろされて支える)で前進し、ゲートをクリアするのである。ボーナスは10秒。
画像14。アウトコースの最初の難所、ルックアップゲート。リンボーダンス体勢で通過するような感じ。ゲートがあることを認識できず、そのまま突っ込んで倒してしまうチームも多かった |
画像15。尻尾を降ろして後方に機体を傾ける形で、ゆっくりとゲートを通過していく。倒し方が足りなくてわずかに接触してしまうような場合も。突破するチームはもちろんあったが、突破率が高いといえるほどではなかった |
ET相撲(画像16・17・18)も今年初登場だ。ラインが分岐してループを描いているエリアがあり、そのループの中央にグレーに塗られたエリアがある。そこに1リットルサイズのペットボトルが置いてあり(そのエリア内なら好きな場所に置ける)、それを「押し出す」か「押し倒す」とボーナスだ。押し出した場合は25秒、押し倒した場合は15秒だ。
画像18。ET相撲の押し出しが決まった場面。ET相撲そのものに挑戦できたチームが少ないため、押し出しだけでも大きなアドバンテージとなっていた。ガレージインを捨て、ここで自分自身が倒れてしまったり、コースに復帰できないのを覚悟でペットボトルを押し出したり倒したりする取捨選択を考えたチームもあった |
ちなみに、速いチームだと30秒台で完走するので、インもアウトも最大で40秒マイナスできることから、すべての難所を成功させると、マイナスのタイムも出る可能性があるのだ。ちなみに今年の東京大会のトップタイムは、インもアウトも10秒を切るタイムが出ている。