宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月26日、小惑星探査機「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」より持ち帰ったサンプル収納容器から採集された微粒子が同日発行(米国時間)の米科学誌「Science」の表紙を飾ったことを発表した。
過去にも同誌の表紙には日本の宇宙関連として、2006年6月に小惑星探査機「はやぶさ」による小惑星「イトカワ」の近傍からの観測成果が、2007年12月に太陽観測衛星「ひので」が、2009年2月に月周回衛星「かぐや」がそれぞれ取上げられており、今回の掲載はそれに続くものとなる。
現在、「はやぶさ」が持ち帰ったサンプル収納容器の2つある部屋の1つであるサンプルキャッチャーA室から回収された微粒子の中で電子顕微鏡観察により岩石質と同定した微粒子の初期分析が進められており、今回のScienceでは、それら初期分析より判明した6編の論文も併せて掲載されている。
掲載された論文の日本語タイトルは以下のとおり
- 小惑星イトカワの微粒子:S型小惑星と普通コンドライト隕石を直接結び付ける物的証拠
- はやぶさ計画によりイトカワから回収された小惑星物質の酸素同位体組成
- 小惑星イトカワから回収された粒子の中性子放射化分析
- はやぶさサンプルの3次元構造:イトカワレゴリスの起源と進化
- イトカワ塵粒子の表面に観察された初期宇宙風化
- ハヤブサ試料の希ガスからわかった、イトカワ表層物質の太陽風および宇宙線照射の歴史
なお、今回の論文および表紙掲載に際し、川口淳一郎プロジェクトマネージャは、以下のようにコメントを述べている(以下、原文ママ)。
みなさま、おめでとうございました。
「はやぶさ」プロジェクトに関われた1メンバとして、大変に光栄で、晴れがましく思います。
今回、「はやぶさ」が帰還させたイトカワ試料の初期分析の結果が、SCIENCE誌に特集として掲載されたことは、分析に参加された国内各大学の研究者、また「はやぶさ」プロジェクトにとって大きな慶びです。
イトカワの近傍観測の成果の特集に続き、今回、帰還試料に関して再度特集号が発刊されることは、古くは「さきがけ」・「すいせい」、また「かぐや」での成果をふまえて、我が国の月・惑星探査の成果が、本格的な成果を出せる段階を向かえた象徴であるように思います。
空間を拓くことで、あらたな姿があきらかになるという、我が国の宇宙開発がかつて夢にまでみた新しい時代が到来していることを実感させるものです。
「はやぶさ」で示せたことは、日本人が独創の成果を出せるという自信ではなかったかと思うところです。まだまだ震災に苦しむ方々も多く、ともすれば閉塞感を感じずには過ごせない時世ではありますが、なにがしかではあっても、我が国の次世代を担う若人に、挑戦する心と自信を植えつけることにつながればと切望するものであります。