無線インフラ大手のEricsson(スウェーデン)は、スマートフォンの先のモバイルアプリ時代を見据えてHTML5に積極的に参画している。EricssonでHTML5への取り組みを統括する同社サービス&ソフトウェアリサーチ担当トップのMartin Korling氏は、「HTML5により、WebブラウザがWebプラットフォームになる」と語る。Korling氏に、EricssonがHTML5を重要視する理由や将来のモバイルアプリについて話を聞いた。

Martin Korling氏。3月11日の東日本大震災発生時に東京で地震を体験、モバイルでの通話とFacebookを使って、家族や友人に無事を知らせた。「モバイルは非常事態をサポートできる大切なインフラになったことを、身をもって実感した」

――無線インフラ技術ベンダーのEricssonがHTML5分野で活発に活動しているとのことですが、具体的に何をやっているのか教えてください。

HTML5はエキサイティングな新しい技術です。アプリケーションにオープンな流通をもたらすもので、Ericssonも他社とともに標準化活動に参加し、イノベーションを助け、貢献したいと思っています。これはEricsson、そして(顧客である)オペレータにもメリットをもたらします。Ericssonは、(HTML5だけではなく)オープンソースなどさまざまなコミュニティに参加しています。

たとえばセキュリティ分野でEricssonは、WebブラウザからWebページを開き、ネットワーク上にあるさまざまなリソースにアクセスする際のサンドボックス的なセキュリティ機能を貢献しています。また、HTML5の枠を超えるリアルタイムボイスの開発も進めています。われわれはこれらソフトウェア側のさまざまな取り組みを、Ericsson Labsで公開しています。

――HTML5はEricssonのビジネスにどのような影響を及ぼすと見ていますか?

Ericssonは、ネットワーク上で利用できるさまざまな機能を提供したいと思っています。これにあたり、音声、動画だけでなく、データや情報などの分野を強化しています。ここでHTML5は重要になります。これらの新機能は将来、付加価値サービスとしてオペレータに提供していきます。HTML5に参加することで、HTML5がこれらネットワーク側の機能へのインタフェースになるようにしていく狙いです。

この中には、サービスとしてクラウド経由で提供できるものもあり、オペレータだけではなく病院やエネルギー企業など法人に向けて提供できるものもあります。

――モバイルアプリ開発者にとって、AndroidやiOSなどさまざまなモバイルOSへの対応は頭痛の種でもあります。将来、HTML5/ウィジェットがこの問題を解消するのでしょうか? アプリストア側では、モバイルアプリ標準化のWholesale Applications Community(WAC)の取り組みも始まりました。

すべてがブラウザベースになるとは考えにくく、今後もネイティブアプリは必要でしょう。ブラウザは容易にアプリが開発できるというメリットを武器に、多くの開発者にリーチできる補完的な役割となると見ています。

WACもそれなりの影響があるでしょうが、OSやアプリストアの競争は健全なことです。(アプリストアが乱立すれば)コンシューマーの混乱は懸念となりかねませんが、アプリストアがそれぞれ差別化を図ればコンシューマーにメリットがあるはずです。うまく使い分けるコンシューマーが出てくるでしょう。

――PCではWebアプリは無料という概念があります。モバイルのWebアプリは、料金の点ではどうなると考えますか?

モバイルでは、アプリというコンセプトがとても力を持っており、開発者が収益を得る仕組みができています。これが、イノベーションにつながっていきます。

すでに(Google Chromeで動くWebアプリストア)「Chrome Web Store」などのWebアプリストアがあります。アプリケーションをダウンロードするという手法は普及しており、Webプラットフォームも同じエクスペリエンスを複製する必要があります。そのために、多くの開発者をひきつけアプリを増やすことが最初のステップとなります。

コンテンツ側はインターネットで収益を得ようと模索を続けています。たとえばNew York TimesはWebサイトとアプリを提供していますが、2つはまったく同じではありません。課金するためには差別化機能を提供する必要があり、コンシューマーはその情報やコンテンツが必要と思えば、料金を支払うことを受け入れるでしょう。