富士通と富士通研究所は8月10日、イーサネットワーク網の自動設計技術を開発したと発表した。人手で設計する場合に比べて、全体の消費電力を約2割削減できたという。

総務省の試算によれば、インターネットトラフィックは毎年約25%ずつ増加しており、今後、クラウド利用の増加などにより、西暦2025年には100テラビット毎秒以上に達すると予測されている。消費電力はネットワークだけでICT全体の20%に及び、ネットワーク全体の消費電力を低減させるための研究開発が各所で進められている現状だ。

今回開発された技術は、データセンターなどの大規模なイーサネットワーク網が対象。ネットワーク構成、拠点間の通信速度、使用する機器などの関係を示した膨大な設計パラメータを、線形計画問題と呼ばれる数学的手法を用いて計算していくスタイルだ。人手による設計ではそれらの要素があまりにも多いために把握が難しく、どうしても余剰消費電力が発生してしまっていたが、コンピュータによる計算を用いることで従来よりも約2割という高効率で余剰消費電力の削減が可能となった。

新技術を利用すると、利用者が前述したような条件を打ち込むだけでネットワークが自動設計される。ネットワーク構成や通信速度、使用機器などはすべて利用者の環境に合わせられ、既存ネットワークの増設時にも活用することが可能である。また、ネットワークを設計する際に費用を抑えるといった計算を導き出す使い方も可能だ。

今回の技術のイメージ図。ネットワーク構成、拠点間の通信速度、ネットワーク機器の候補リストなどの条件を入力し、目的関数や制約条件、設計変数なども加味して計算させる。人手による設計に対して約2割も消費電力を削減したネットワーク構成を導き出す

なお、この技術の一部は総務省の委託研究「クラウドサービスを支える高信頼・省電力ネットワーク制御技術の研究開発(環境対応型ネットワーク構成シグナリング技術)」および「最先端のグリーンクラウド基盤構築に向けた研究開発(環境対応型ネットワーク構成シグナリング技術)」によって開発されている。

課題はイーサネット網のみとなっている点で、今後はイーサネット以外のネットワークへの適用を進めていき、またサービスとして実用化も平行して開発を進めていくとしている。また、同技術の詳細は9月13日から札幌市の北海道大学でスタートする「電子情報通信学会ソサエティ大会」にて発表される予定だ。