「2011年度は、攻めに転じる年になる」。ブラザー販売 取締役 三島勉氏は、同社のビジネス向けプリンタ・複合機戦略をこう位置づける。

ブラザーは5月17日、新たにハイエンドモデルとして「ジャスティオ プロ」シリーズを追加した。これにより、これまでの量販店ルートを通じた販売展開に加えて、訪問販売系ディーラールートでの販売を加速することになる。

2011年度のブラザー販売のビジネス向けプリンタ・複合機戦略はどうなるのか。「ジャスティオ」シリーズおよび「ジャスティオ プロ」シリーズの戦略を、ブラザー販売 三島取締役に聞いた。

--ブラザーのプリンティング・アンド・ソリューションズ事業にとって、2010年度は、どんな1年になりましたか?

ブラザー販売 三島勉取締役

三島 2010年度は、大きな転換の年であったといえます。というのも、熱転写式FAX事業を縮小し、インクジェットプリンタ、レーザープリンタによるプリンタ・複合機事業への集中を加速させた1年だったからです。プリンタメーカーの立場を改めて強調する土台づくりの1年となりました。

業績としても、FAXの縮小分を、プリンタでカバーし、増収を確保しています。プリンタメーカーとして再出発する年になったといってもいいのではないでしょうか。これまで、ブラザーといえばミシンのイメージが強く、さらにFAXのイメージも強い。今後は、プリンタメーカーとしての認知度を一層高めていく必要があります。

--プリンタメーカーとしての認知度を高める活動としては、どんな取り組みがありましたか?

三島 ひとつは量販店における製品展示を拡大しました。この1年でブラザーのプリンタを展示していただいている店舗数は、約1.5倍となる1,000店舗以上になりましたから、これまで以上に多くの方々に、ブラザーのプリンタに触れていただく機会が増えました。ブラザーが本気でプリンタに取り組んでいくという姿勢をお見せすることにもつながったのではないでしょうか。

当社のプリンタ製品カタログには、「プリンタはブラザーへ」というキャッチフレーズを入れています。これもプリンタメーカーとしての位置づけを明確にする狙いがあります。

一方で、これまでブラザーが弱かった訪問販売系ディーラールートに対しても、少しずつアプローチを行ってきました。この領域はこれから強化していくことになります。

ブラザーのプリンタ製品カタログ

--2011年度はどんな年になりますか?

三島 2010年度までは、FAX事業の縮小に代表されるように、利益重視という側面もあり、「守り」に入っていた部分がありました。地道に体質を改善するというフェーズであったともいえます。しかし、2011年は積極的に「攻め」に転じたい。もちろん国内需要を見た場合には、東日本大震災の影響もあり、個人の購入や企業での投資が抑制されたり、サプライチェーンにおいても課題が出ると想定されます。しかし、2011年3月に、ブラザー工業が発表したグループ中期経営戦略「CS B2015」では、「Back to Growth~成長への再挑戦~」を掲げ、成長戦略を打ち出しています。

従来の中期経営計画の軸足が「利益とキャッシュの確保」であったのに対して、新たな中期経営計画では、2015年度に2010年度比で1.5倍となる7,500億円の売上高を目指し、全地域、全事業領域での成長を前提としています。国内販売およびマーケティングを担当するブラザー販売も、これに則った成長戦略に取り組み、さらにプリンティング・アンド・ソリューションズ事業でも高い成長を目指すことになります。