「CS5.5」による最新の映像制作事情が紹介された

アドビ システムズは、東京 六本木アカデミーヒルズにて「CS5.5 VIDEO DAY」を開催した。セミナーでは、「Adobe Creative Suite 5.5」によって進化した「Premiere Pro CS5.5」と「After Effects CS5.5」の新機能紹介や、ファイルベースの映像制作ワークフローなどが紹介された。

ゲストとして登壇したマリモレコーズ 江夏由洋氏は、デジタル一眼レフカメラ(DSLR)やRED ONEで撮影した映像素材を、CS5.5で編集した作品を披露。江夏氏は、「DSLRは、レンズを交換すればマクロや広角など、従来のビデオでは撮れない映像が撮れるのがいい。どんな映像が欲しいかを考えてから撮影すれば、希望通りの素材が手に入る」とDSLRの魅力を語った。

江夏氏は、これらの素材を扱う上でもっとも重要となるキーワードは「ファイルベース」で、制作環境としては、64bitが必須だと語る。江夏氏は、昨年「CS5」が発売されて以来、全ての映像制作をCS5とCS5.5だけで行なっているとのこと。すべてのツールをアドビ製品で統一しているため、「Photoshop」や「Illustrator」のファイルも映像素材と同様に直接読込めるところも利点だと言う。そのため、映像編集中にレンダリングを行なう必要はなく、江夏氏がレンダリングを行なうのは、映像を完成させる最後だけとのこと。

マリモレコーズ 江夏由洋氏による講演「デジタル一眼ワークフロー」

マリモレコーズでは、EOS 5D mk2だけでなく、RED ONEも使って映像制作を行っている

江夏氏が紹介した映像制作ワークフロー

江夏氏が会場内で公開した映像は、女優・モデルの金子久美さんを撮影したプロモーション映像。使用した機材はEOS 5D mk2とEOS Kiss X4、RED ONE。そして、音声はEDIROL R-4 Proでレコーディングされていた。これらの異なる機材で記録した素材をCS5.5に読み込んでも、問題なく編集が可能とのこと。

CS5.5の優れた新機能として紹介されたのは、「After Effects CS5.5」に搭載された「ワープスタビライザー」。これはカメラの手ぶれを補正する強力なフィルター。手持ち撮影を行なった映像に、このフィルターをかけてから解析を行なうと、まるでレール(ドリー撮影)かステディーカムを使って撮影したかのようなブレのない映像に生まれ変わる。江夏氏がRED ONEで撮影した4480×1920/8秒の映像にワープスタビライザーをかけたら、わずか8分程度で解析が終わったとのこと。

「ワープスタビライザー」をかけると、ドリー撮影を行なったような滑らかな動きになる

「トーンカーブ」を使って色を整えるデモ。作品のイメージに合わせて色を変える重要性を紹介

セミナーでは、「カメラレンズブラー」も紹介された。こちらは従来のブラーと異なり、レンズのボケをシミュレートするフィルター。絞りの羽根の数や回析フリンジを指定すると、まるで指定したレンズで撮影したかのようなボケを再現できる。

江夏氏は最後にCS5.5について、「見た目はCS5とほとんど変わらないが、かゆいところに手が届くツールに進化した。CS5.5の登場によって、ファイルベースの映像制作環境が整った感じがする」と感想をコメントした。

手前のボケは、「カメラレンズブラー」によって作られている

EOSムービーをクロマキーで抜く場合は、光量が重要になるそうだ。光量が足りない場合は屋外撮影を勧めていた

映像と音声が異なるファイルの場合、「クリップを統合」を使うと編集作業が楽になる

「Premiere Pro CS5.5」では、RED Rawの映像を現像可能になった