米ラスベガスで開催中のMIX11で米Microsoftが「Silverlight 5」の開発者ラインタイムやソフトウエア開発キットのベータ提供開始を発表した。

Silverlight 5はメディア機能が強化されており、新機能としてハードウエアHDデコーディング、オーディオのピッチ修正を含む可変レート・ビデオ再生を提供するTrickplayを備える。またベータ版では、アプリケーション内での3D表示を実現するXNAベースのインタフェースが用意されている。

「MIX11」初日は「IE9」、2日目の主役は「Windows Phone」。2日目キーノートの後半の登場になってしまったが、スクリーンに「Silverlight 5」が映し出されると会場から歓声が上がった

ベータプログラムを経て、正式版リリースは2011年末を予定

米MicrosoftはInternet Explorer 9でHTML5サポートに踏み出し、GPUを活用した豊かなHTML5メディアの再生を実現するなど、Silverlightの領域に自らHTML5技術を浸透させている。開発者がSilverlightに投資すべきポイントが見えにくくなっており、HTML5の台頭とともにSilverlightやFlashが徐々に終息へ向かうという声も聞こえてくる。

こうした見方に対してSilverlight 5ベータを発表したScott Guthrie氏は、HTML5とSilverlightを巧みに組み合わせることで、よりリッチでスムースなプレゼンテーションが可能になると指摘した。一例として、U.S. NavyのBlue Angelsの新サイトのデモが披露された。

HTML5とSilverlightを組み合わせ、よりリッチなWebサイトを

Blue Angelsの活動の目的はU.S. Navyのリクルートである。サイトを訪れた若者があこがれを抱くようなサイトでなければならない。新サイトは基本的に、誰もがアクセスできるHTML5技術を駆使して構築されている。それだけでもリッチでインタラクティブな操作でBlue Angelsの活動を体験できるが、さらに若者が特に興味を持つと思われる部分をSilverlightを用いて強調している。例えば、F-18の説明にユーザーが操作できる3Dモデルを用いることで、実際の機体やコクピットに触れたような感動を伝えようとしている。また演技中の機体に設置した複数のカメラが撮影した映像を、ユーザーが組み合わせられる機能も用意している。迫力あるHD映像でパイロットの視線を体験し、パイロット同士の緊迫感のあるコミュニケーションを知ることで、華麗な演技を成立させるBlue Angels隊員のすごさが伝わってくる。

F-18の3Dモデルを使って、実際にフラップや車輪などを動かしているかように楽しめる

演技飛行の状態(下)と比較しながら、3つのカメラアングルを楽しめる。

最後にJohn Papa氏が、「3D House Builder」というアプリケーションを使ってSilverlight 5の新機能をひと通り紹介した。自分の好みの3Dオブジェクトの建物を選び、外装やインテリアを整え、価格を調整する。前述のメディア機能の強化に加えて、Silverlight 5ではMVVM (Model-View-ViewModel)やデータバインディングが改善され、テストツールのサポートが向上している。Web開発者/デザイナーが集まるMIX11のキーノートでは特に言及されなかったが、Silverlight 5はエンタープライズ・アプリケーション分野に生き残りの可能性を広げるアップグレードでもある。

シニアテクニカル・エバンジェリスト John Papa氏

「3D House Builder」、3Dオブジェクトの建物を選び、ドアなどのパーツを追加する

家の価格に、各パーツの価格を加算、割引を加える。データを接続するデータバインディングで実現する機能だが、「ドア」の価格が反映されていない……

「Visual Studio 2010」で問題点を確認。「Silverlight 5」は、エラーの原因を把握しにくいというデータバインドの問題を解消