日本ヒューレット・パッカードは2月17日、今月竣工した新社屋の内覧会を開催した。地上9階建て、延床面積約4万5000m2の大型オフィスには、「最先端のテクノロジーとサービスを提供する『ソリューションショーケース』」、「創造性を発揮し、働き方の多様性をサポートする『先進的ワークプレイス』」といったコンセプトが掲げられている。

江東区大島に建てられた日本HPの新社屋

新社屋は、東京メトロ半蔵門線/都営地下鉄新宿線の住吉駅から徒歩5分という場所にある江東区大島に建てられた。以前は新日本石油が所有していた土地を買収し、自社ビルとして新たに建設。設計に約2年、施工に約1年4ヶ月もの期間が費やされている。

新社屋建設の最大の目的は、都内に分散しているオフィスを統合すること。「旧Compaqのオフィスが現在もそのまま利用されている状況で、23区内に事業所が4つも存在する」(日本HP コーポレートコミュニケーション本部 本部長 本田光広氏)と言い、業務効率改善のために、現在の市ヶ谷本社、荻窪事業所、高井戸事業所、新宿事業所を新社屋に統合する。

移転するHP社員は約4000人。協力会社や契約社員、派遣社員も合わせると6000人にも上るという。引越し作業は、週末を利用して3月から徐々に開始。5月前半には全社員が完了する計画になっている。なお、HPの都内の拠点のうち、バックオフィス業務を担う八王子事業所と、PC/サーバを生産する昭島事業所は、そのまま残される。

川の右側にある横長のビルが日本HPの新社屋。東京スカイツリー(写真左方)も望める

社屋の裏には庭園も設置。その中央には、紅しだれ桜が植えられている。なお、紅しだれ桜は4本が1つにまとめて植えられており、4オフィス統合の意味が込められている

新社屋の大きな特徴としては、「吹抜け」と「庇(ひさし)」が挙げられる。吹抜けは、社屋の中心部を1階から9階まで貫くかたちでで設置。天井にガラスを張って太陽光を広く取り入れ、照明電力を減らしているほか、自然換気を促して空調電力も節約する設計になっている。

一方、庇に関しては、社屋の四方すべてに長めの庇を設置することで、夏の太陽光を遮りつつも、できる限り取り自然光を入れる設計になっている。これにより、夏季の空調電力を減らせるほか、ブラインドの利用回数削減にもつながると見込んでいる。なお、猿江恩賜公園に面する西向きの庇下スペースに関してはバルコニーが設けられており、社員が自由に出られるという。

新社屋を1階から9階までを貫く吹抜け。各フロアの突出部分が互い違いになっているため、仮に物を落としても1つ下の階で止まるという。

西側の庇下スペース。バルコニーになっており、社員が自由に出られる。目の前には、横十間川や、230本の桜が植えられた猿江恩賜公園がある。

4階から7階がオフィスフロアになる。フロア面積は約100m×55mと、サッカーコートと同程度。全方位奥行き約17mのスペースがとられているうえ、柱はすべて窓の外に設置されており、開放的な空間になっている。固定席を窓側に配し、その内側にフリーアドレス席が用意される予定。また、各フロアの一部には、通称"ファミレス席"と呼ばれる歓談向けの席も設置される。

オフィスフロアの様子。柱を窓の外に出した設計になっているため開放的。なお、オフィスエリアは長方形の中心をくりぬき、均等に4分割されたような形状になっている。各エリアがどの方位にあるのかは、カーペットの色でわかる。この写真では手前のエリアが緑色、前方のエリアがオレンジ色になっている。

固定席の様子。右側にある部屋は会議室。2、3人が入室できるテレビ会議用のものから、大人数で話し合える大規模なものまで、さまざまな会議室が用意されている。いずれの部屋もセンサー式の自動照明を採用。

窓側に固定席が配されている。手前のスペースにはフリーアドレス用の席が設置される予定。

9階は各種の機材を設置するスペースになっているため、社員が利用するのは8階まで。その最上階に当たる8階は、食堂エリアになっており、和洋中から量り売りの惣菜まで、さまざまなタイプの食事が提供される。座席数は900。10名程度が入れる小部屋がいくつか用意されているほか、仕切りを動かして大部屋を作ることもでき、さまざまなニーズに応えられる設計になっている。

サービスは、午前中から夜まで提供され、酒類も販売されるという。決済は、電子マネーのnanacoで行われる。

食堂エリアの様子。周囲に飲食店が少ないためか、さまざまなキッチンが設置されており、非常に豪華。キッチン周りに木材も使われているが、不燃処理が施されている。

食堂エリアに設置された座敷タイプの小部屋。

バルコニーも広めにとられており、晴れた日には外に出ることもできる。

食堂エリアの大きめの部屋。このほかに、可動式の間仕切りで作れる巨大部屋もある。

このほか、3階はサーバルーム、2階は各種のHP製品を展示したEBC(Executive Briefing Center)とトレーニングセンターになっており、1階にはセブンイレブンとスターバックス コーヒーが入店する。

3階のサーバルームの様子。

2階に設置されたトレーニングルームの一室。

なお、新社屋では各フロアのトイレにも工夫が施されている。いずれのフロアにも男性/女性用トイレを2つずつ用意し、それらを吹抜けを挟んで対面に設置している。これは、トイレが満室だったときのことを考えてのもので、向かいにあるもう一方のトイレを利用できるため、わざわざ上下のフロアに移動するといった面倒な思いをすることがなくなるという。

また、車椅子用トイレのみならず、オストメイト(人工肛門/人工膀胱保有者)に対応したトイレも設置されている点も大きな特徴の1つ。内装に関しては、男性用が落ち着いた雰囲気、女性用が明るい雰囲気で統一されている。

オストメイトに対応したトイレも設置。案内にも対応マーク(一番下)が記されている。

女性用トイレの内部。明るい色が使われているほか、パウダールームなども設置されており、社内では"高島屋仕様"と呼ばれているという。

女性用トイレの洗面所。

女性用トイレに設置されたパウダールーム。

男性用トイレの様子。こちらは落ち着いた雰囲気で、"伊勢丹仕様"と呼ばれている。

男性用トイレの洗面所。

新社屋は、5月16日に開所式が行われる予定になっている。