リコー 取締役 専務執行役員 グローバルマーケティング本部長 我妻一紀氏

リコーは1月20日、同社が展開するマネージメント・ドキュメント・サービス(以下、MDS)事業を大幅に強化することを発表した。2013年までの3年間、グローバル規模でMDS事業インフラに約260億円を投資し、3,000億円の売上を目指す。リコー 取締役 専務執行役員 グローバルマーケティング本部長 我妻一紀氏は「リーマンショック以降、コスト削減と生産性向上に対するお客様のニーズは高まる一方。こういった要望に対してリコーがどういう価値を提供できるかと考えたとき、MDSを軸としたサービス会社への転換という回答で応えることにした」と語り、これまで画像機器事業で培ったノウハウと経営資源をMDSに活用し、サービスカンパニーへの転換を図る。

リコーが提唱するMDSとは、オフィスにおけるドキュメントの入出力、すなわち"紙への印刷状況"を分析し、プリンタやコピー機などの機器の最適な配置や効率的なドキュメントワークフロー環境を提案、さらにその構築/運用/管理を行い、継続的に改善提案をしていくサービスを指す。日本市場においてMDSは

  • MPS(マネージド・プリント・サービス) … オフィスにおいてプリンタや複合機あどの入出力機器の最適配置や運用/管理を請け負うサービス
  • DPS(ドキュメント・プロセッシング・サービス) … オンサイト/オフサイトによる集中出力処理や文書の電子化/保管/再資源化を請け負うサービス

の2つから構成されている。

環境問題やコスト削減、ワークスタイルの変化といった世界的な潮流を受け、リコーは10年ほど前からグローバルレベルにおいてサービス事業拡大の方向性を示してきた。2008年に話題となった米IKONをはじめとする、強力な販路とノウハウをもつサービス企業の戦略的買収も積極的に展開、現在では「世界180カ国以上にサービス事業を展開し、3,000社の顧客をもつ」(我妻氏)に至っているさらに全世界共通の25のサービスモジュールを策定し、グローバルで均一なサービスを提供することに努めてきた。このサービスモジュールには、リコーが長年培ってきた「環境対応」を主眼に置いたノウハウが活用されており、さらに「ドキュメントワークフロー改善」「チェンジマネジメント」といった分野で他社との差別化を図っている。

今回、MDS事業における2013年度の目標として「3,000億円の売上」を掲げるが、予定している260億円の投資は、主に経営資源のサービス事業へのシフトとインフラ構築に当てられるという。「経営資源の中でも重要なのは人材。グローバルに統一された教育プログラムを充実させ、セールスおよびサービスの人材教育を強化する。インフラ構築においては、コールセンターやサポートセンターなどのセンターへの投資、グローバルな販売体制の強化を図る」(我妻氏)

また、IBMなど他企業とのアライアンスも積極的に展開していくとしている。

グローバルレベルでサービス事業の販路を拡大してきたリコー。「ボツワナや北朝鮮など"ワケあり"の国のほかは、ほぼ全世界にサービスを提供できている」(我妻氏)

リコーが他社との差別化要因としてあげるのが、全世界共通のサービスモジュール。とくに環境対応に関しては絶対の自信をもつ

MDS事業に260億円を投資、3年後には3,000億円の売上を目指す。カギとなるのは「サービスを担う人材の教育」(我妻氏)

3年後にはハードウェアとソフトウェアの事業構造の比率を反転させることを目標に掲げる

"複合機メーカー"のイメージから脱却できるか

リコージャパン 代表取締役 社長執行役員 畠中健二氏

コピー機や複合機というハードウェア中心のビジネスからサービス中心のビジネスへと事業構造を変化させる - コピー機や複合機のメーカーというイメージが強いリコーだが、前述したとおり、突然の方針変更ではなく、数年前から徐々に準備しきいた"サービスカンパニーへの転換"を、具体的な数値目標をもって語ったに過ぎない。ここで改めて同社が発表に踏み切った背景には、「ドキュメントビジネスは、もはやハコを売るだけでは限界。ソリューションを載せてサービスを提供したほうが利益率ははるかに高い」(我妻氏)という言葉の通り、ハードウェアを提供するだけでは顧客のニーズに対応できないという現実が、リーマンショック以降、より重くのしかかってきていることがあげられる。

リコージャパン 代表取締役 社長執行役員 畠中健二氏は「コアビジネスとなる既存のプロダクト事業でトップを譲る気はない。これらを"今日のビジネス"とするなら、サービス事業の拡充は"明日のビジネス"、そしてこの"明日のビジネス"を新たな成長エンジンとしていきたい」と語るが、今後、ハードウェアビジネスには各種のサービスをマージする傾向が強まると見られている。「リコージャパンでは、IKONのノウハウを活用し、日本市場でも積極的にお客さまにドキュメント環境の改善を提案していきたい」(畠中氏)とする。日本市場では2013年度のサービス事業の売上を1,900億円(2010年度売上見込み1,400億円)、MDS事業分野は「4倍増、シェア50%」をそれぞれ目指す。

「デジタル情報は前年比プラス62%増大している。情報をムダに印刷するような、非効率なドキュメント管理は大幅なコスト増を招くのは明らかだが、MPSを導入することで2億5,000万ドル規模の企業であれば約500万ドルの支出を削減できることがわかっている。だが、いまだ多くの経営層がドキュメント管理コストを把握していない」(IDC Japan)という現実に対し、MDS/MPSというサービス事業で顧客の利益改善に臨むとするリコー。複合機メーカーのイメージを3年後にどこまで変えることができるのか、それは顧客のドキュメント管理のあり方がどこまで変わるかで答えが出る。

リコーが今後の事業の柱とするMDS - 3年後にどうイメージが変わっているだろうか?