昨年11月、3日間に渡りアイルランド・ダブリンで「MeeGo Conference 2010」が開催された。今年2月に発足して1年足らずのMeeGoだが、参加者は1,000人以上。モバイルがコンピューティングの主役となりつつある中、登場間もないMeeGoにかける熱気を感じさせた。本稿では、MeeGoプロジェクトの中心であり、共同でMeeGoを立ち上げた2つの企業 - 米IntelとフィンランドNokiaの代表者によるスピーチを紹介したい。

IntelのDoug Fisher氏

まずはIntelのシステムソフトウェア部門 ソフトウェア・サービスグループのゼネラルマネージャ兼副社長のDoug Fisher氏。MeeGoの方向性と強みについて語った。

Fisher氏のキーワードは"オープン"と"一貫性"だ。今後5年で、新たに1億人の人がインターネットを利用するようになり、インターネットにアクセスするための端末として新たに15億台が登場する、とFisher氏は予想する。ここでは、これまでのデスクトップやノートPCに代わって、モバイル端末、車載情報システム(IVI)など新しいタイプの幅広い端末が牽引することになる。ここがMeeGoが目指すところだ。「クロスセグメントという新しい需要が生まれており、MeeGoはここでのイノベーションを推進していく。これはわれわれの役割であり、責任でもある」とFisher氏は来場者に呼びかける。

次にFisher氏はイノベーションへのアプローチとして、垂直型とオープン型の2つを対比させた。Fisher氏は暗にライバルを示しながら、「1社が全部の技術を統合する垂直型の場合、閉鎖されたハコの中に支配権がある」とし、「われわれはオープンモデルを通じて、新しいデバイスへの需要を満たしたい」と続ける。実際、15億台という規模を実現する唯一の方法がオープンで革新的な方法だ、とFisher氏は見る。

Fisher氏に紹介されて壇上に上がった個人開発者(「Nokia N900」ハードウェアアダプションメンテナー)のCarsten Munk氏は、これを「MeeGo Way(MeeGoのやり方)」と形容した。Munk氏は、MeeGoプロジェクトの特徴として、「参加、メリトクラシー(能力主義)、透明性、アップストリーム(上流)第一主義」の4つを挙げ、「ARMベースのN900に関わっているわたしが、Intel幹部と一緒にステージに立つことができる」とオープン性を強調した。

もう1つのキーワード"一貫性"とは、分断/細分化していないことだ。「MeeGoで開発すると、再度開発しなおすことなく他のベンダのMeeGoベースの端末で動く」とFisher氏。単一の環境により、開発コストを削減できる、これはMeeGoの大きな特徴とした。

Fisher氏はIntelの取り組みとして、「MeeGoが動く最高のアーキテクチャを提供すること」と説明する。MeeGoはIntel(Atom)とARMをサポートするが、IntelはAtomに大きく投資しており、低消費電力/高性能の端末を実現するという。

Fisher氏が紹介したもう1つの取り組みがアプリストア「Intel AppUp」だ。開発者が参加し、収益に変える場所という位置づけで、エンドユーザー向けのアプリだけではなく、「他の開発者が組み合わせて開発できるミドルウェアを提供する場としても利用できる」と説明する。また、OEMメーカーやサービスプロバイダが自社ブランドのアプリストアとして展開することも可能という(なお、MeeGoアプリのアプリストアとしては、Nokiaの「Ovi Store」もあり、MeeGoプロジェクトとしては、他者による立ち上げもありうると見ている)。

MeeGoがスタートしてまだ10カ月だが、製品化はすでに始まっている。Fisher氏は例として、IPTVなどを手がける英Amino CommunicationsのMeeGoベースの「Amino」、独4tittoのMeeGoベースのタブレット「WeTab」などを紹介した。Aminoの場合、18カ月の予定開発期間を6カ月と、なんと3分の1に短縮できたという。

MeeGoを搭載した端末セグメントとしては、2011年はMeeGoベースのネットブックが増えると予想した。

NokiaのAlberto Torres氏。「コンピューティングは新しい時代を迎えた」と述べた

スマートフォン側では、Nokiaが採用第1号になると予想されている。NokiaのMeeGoコンピュータ担当執行副社長 Alberto Torres氏は、具体的な製品計画について、「Nokiaは2011年にMeeGo端末を投入する」と述べた。

Torres氏は、NokiaにおけるMeeGoの位置づけとして、「現代風のユーザーエクスペリエンスを作り出す」「開発者にエキサイトする環境を提供する」の2つを挙げる。

MeeGoにおけるNokiaの最大の役割が、MeeGoの開発技術となっている「Qt」だ。QtはNokiaのクロスプラットフォームのUI/アプリ開発ツールで、「Qtにより、同じアプリケーションをさまざまな端末で動かすことができる」とTorres氏。IntelのFisher氏が約束する一貫性で重要となる。容易さと生産性のほか、優れた環境を実現できる点もQtの魅力だ。「ユーザーインターフェス以上のものを表現できる」とTorres氏は言う。ここでは、宣言的言語拡張のQMLを含む「Qt Quick」などを利用して実現することになる。

そして、ARM/NVIDIAとEmbedded Linux、AtomとEmbedded Linux、ARMとSymbian、AtomとWindowsと、さまざまなハードウェアアーキテクチャとOSの組み合わせで同じアプリケーションを披露して見せた。

スマートフォンなどの製品では、NokiaはMeeGoを利用して、素晴らしいハードウェア(端末)とアプリケーションの2つの点で差別化を図るとした。「この分野(スマートフォン)はまだ、創造、開発、イノベーションの余地がある」とTorres氏は述べ、「iPhone」や「Android」が優勢なモバイル市場にチャンスがあると考えていることを示唆した。差別化の最後の部分は、「開発者が開発し提供するアプリだ」と述べ会場の開発者に呼びかけた。