11月、Symbian Foundationはみずからが主導する「SYMBEOSE(Symbian the Embedded Operation System for Europe)」イニシアティブが欧州連合(EU)より1,100万ユーロの投資を受けることを発表した。イニシアティブに参加している企業からの投資を入れると、2,200万ユーロの資金を得ることになる。SYMBEOSEとは一体何なのか? 11月にオランダ・アムステルダムで開催された「Symbian Exchange & Exposition 2010」にて、イニシアティブを主導するSymbian FoundationのDavid Sallis氏が行った説明をもとに紹介してみたい。

David Sallis氏

SYMBEOSEはモバイルOS「Symbian」のコミュニティを拡大するイニシアティブだ。フィンランドNokia、スイスST-Ericssonらの24の企業/組織が参加しており、Symbianをベースに、さまざまな組み込み用途に利用できるプラットフォームを共同で開発し、欧州企業などがこれを利用できるようにする。Symbianはオープンソースなので、SYMBEOSEの取り組みもオープンソースとなる。なお、SYMBEOSEはSymbian Foundationが主導するが、Symbian Foundationの代替組織ではない。

すでに報道されている通り、Symbian FoundationはNokiaの管理下に入ることを発表しており、今後はライセンス供与のみを行う団体となる。今後、SYMBOSEとNokiaの関係も変化していくと思われるが、当面、イニシアティブとしての活動はそのまま続けられることになりそうだ。

技術的内容としては、コアOSではハードウェア側の進化を利用する非対称型マルチプロセッサ、セキュリティとID認証、高度な動画/画像処理などが挙がっている。また、Symbianのテリトリである携帯電話からのプラットフォームの拡大も重要な課題という。

ミドルウェア側では電源管理インフラ、位置情報対応サービス、VoIP上での非常通報などが挙げられている。アプリケーションサービス層では、マルチメディア強化、支払い、ユーザー生成サービスなどに加え、Symbianとの互換性にも取り組むという。開発側では、ハードウェアリファレンスプラットフォームやシュミレーションプラットフォーム、非プログラマでも開発できるようなツールを揃えることも考えているという。

11月1日、欧州委員会(EC)のFP7(第7次研究フレームワーク計画)の官民連携(PPP)であるArtemis Joint Technology Initiativeを通じて、EUより投資を受けることが決定した。70以上ものプロポーザルから選ばれたというが、この背景にはモバイルでリードしたいというEUの狙いがありそうだ。

「EUにとってモバイルOSは非常に重要な分野だ」とSallis氏。ここ2、3年、「Android」や「iOS」など、米国企業のモバイルOSが急速にシェアを拡大させている。PCではすべて米国企業がシェアを取っており、モバイルでは先にリードしていたEUにしてみれば、欧州産技術であるSymbianを活性化させ「モバイルでのリードを維持することは重要」と今回の投資の意図を説明した。

現在SYMBEOSEの取り組みのうち、44%を占めるのが中小規模企業という。参加国はスペイン、フィンランド、フランス、イタリア、ポーランドなど。ハンガリーや英国も参加を表明している。