11月11日、NECのプライベートカンファレンス「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2010」の開催にあたって、今年のテーマと同様の「人と地球にやさしい情報社会へ。~あなたとともに、未来をひらく~」と題したNEC代表取締役執行役員社長である遠藤信博氏の講演が行われた。ここでは、同講演のハイライトをお届けしよう。

NEC 代表取締役執行役員社長 遠藤信博氏

「NECが中期経営計画『V2012』で掲げたクラウド、新規事業の開拓、グローバルのビジネスの展開という3つの軸のうち、最も重要と考えているのがクラウドの展開による人と地球に優しい情報社会の実現、それによる市場への貢献」と語った遠藤氏は、同社が目指す情報社会を「誰もが自由に使えるサービスによって、安心・安全・便利で豊かな個人生活を実現できる情報社会、限りある資源を効率的に活用し、地球環境と共存・持続的な発展を可能とする情報社会」と説明し、2つの情報社会を同時に"C&Cクラウド"で実現するとアピールした。

その実現に向けたビジョンとしては、「センサーやデバイスを通してあらゆる情報を電子化すること」、「異分野情報の新結合によるサービス創造」、「さまざまな端末を通したモバイルクラウドサービス」が挙げられた。これらによってキャリア向け、企業向け、個人・家庭向け、官公庁向けの各種サービスが場所や利用者にとらわれず提供され、人と地球に優しい情報社会が実現されるという仕組みだ。

NECが目指す人と地球にやさしい情報社会

C&Cクラウドがユーザー企業に貢献している具体例も挙げられた。同社は自社のクラウド関連技術やユビキタス、ITを、企業が持つ業界や業務に関するノウハウ、販売チャネルと組み合わせることで、各種業界向けの新たなビジネスモデルや新サービスを提供している。すでに建設業界向け、金融業界向けのクラウドサービス共同開発は行われており、スペインでのキャリア新サービス立ち上げ支援も実施された。

同氏は情報出力に対する取り組みも紹介した。デジタルサイネージと顔認識技術を組み合わせて、見る人にマッチングさせた情報配信を行う技術は注目され、東京国際空港新国際ターミナルで大規模な導入が行われている。

また、10日に発表されたモバイルクラウドコミュニケーターとして用意された「LifeTouch」は、AndroidをOSに採用した業務タッチ端末として注目されている。業務向けにカスタマイズしたうえで出荷される予定だが、家庭内での消費エネルギー管理、健康即泥データの管理、電子書籍、電子ショップにも使える。

加えて、グローバルビジネス展開のサポートもC&Cクラウドで実現しているという。これまでは世界5地域をカバーできる体制を整え、地域ごとに需要の高い技術を紹介する形をとってきたが、今後はクラウド指向データセンター(CODC)事業を5極で立ち上げ、クラウドサービスをグローバルに提供する「グローバルサービスネットワーク」を構築、グローバルで一環したサービスを提供する。すでに中国では大手ソリューションベンダである「東軟(Neusoft)」と合弁会社を設立し、中国市場向けにSaaSサービスを提供中だ。

さらに、同氏は企業の経営改革や業務プロセス改革の支援についても言及。ムダの多さや各種法令への対応など、企業が抱える課題にはある程度の偏りがある。そして、それはNEC自身が抱えてきた悩みでもあるという。

「お恥ずかしながら、当社もまったく同じ課題を抱えていた。われわれの経営システム改革の取り組みを紹介すると、『自分たちがやりたいことをNECが先に実践している』と言われる」と同氏。クラウド型基幹システムの提供、モバイルクラウドサービスによる業務効率化、中堅・中小企業向けのSaaSソリューションなど、技術とともに改革経験のある企業として実現性の高い提案のできることが強みだ。

同氏は環境への取り組みも紹介した。同社は省電力サーバや省電力プラットフォーム、省電力ファシリティなどさまざまな機器を用意することで、トータルなグリーンITを実現している。これらを活用し、さらにオフィスクラウドサービスの提供によるワークスタイルの改革、消費エネルギーの見える化などを実施するのが「オフィスまるごとエコ」だ。

NEC玉川ソリューションセンターでオフィスまるごとエコを導入したところ、CO2排出量を約50%削減できたという。同社では電池やスマートグリッド領域での取り組みも行われているため、戸建て住宅や店舗、電気自動車から、発電所システムまでを広く手がけ、社会全体のグリーン化を手がけることが可能だ。

C&Cクラウドによるユーザー企業への貢献

「NECはサービス、プラットフォーム、センサー、端末までを含めてクラウドを提供する。お客様とともに新サービスを立ち上げ、グローバル展開や経営改革、エコ対応などを一括して支援する。そして、お客様とともに未来をひらくことを目指している」と遠藤氏は語った。