国立天文台は、10月20日から21日にかけて地球に最接近する「ハートレイ彗星」を肉眼や双眼鏡などで観察し、その観察報告を受け付ける「地球に近づくハートレイ彗星を捉えよう」キャンペーンを11月14日夜(15日朝)まで行っている。

10月17日0時57分に国立天文台 天文情報センターの佐藤幹哉氏が撮影したハートレイ彗星。(撮影地は山梨県鳴沢村、300mm望遠レンズ(F2.8)15秒露出×10コマ合成)

ハートレイ彗星(103P/Hartley)は、1986年3月15日にMalcolm Hartley氏によって発見された彗星で、太陽からも地球からも遠ざかっている段階であることもあり、その時の明るさは17~18等と暗いものであった。その後、観測により、同彗星は太陽のまわりを約6年かけて回っている短周期彗星であることが判明。Hartley氏が単独で発見したものとしては、2個目の短周期彗星であることから、当時は「ハートレイ第二彗星」と呼ばれていた。

その後、同彗星は1991年、1997年、2004年に太陽に接近。特に1991年と1997年には地球にも比較的接近し(ともにおよそ0.8天文単位)、約8等級の明るさとなり、双眼鏡や小型の望遠鏡でも観測されるくらいに明るくなった。

2010年、同彗星は再び太陽に接近することとなる。最も太陽に近づくのは(近日点通過)10月28日で、その時の太陽から彗星までの距離は約1.06天文単位。

今回は、地球との位置関係が良く、10月20から21日にかけては、地球との距離が約0.12天文単位となり、1986年の発見以降では、最も地球に接近する。そのため、地球最接近から太陽に最接近する10月下旬、あるいはその直後となる11月上旬に、ハートレイ彗星は過去最も明るく観測できると期待されており、同天文台しても、今回のキャンペーンを企画した。

ただし、彗星の光度の予測は難しく、人によってその明るさ、また最も明るくなる時期が異なっており、現状、最も明るい時で4~6等程度と予想されている。これは、市街地を離れた比較的空の暗い場所では、かろうじて肉眼で確認できる明るさとのこと。

天球上の同彗星の動きは、地球とかなり接近するため、地球から見た彗星の見かけの移動が速くなるが、キャンペーン期間中はペルセウス座、ぎょしゃ座、ふたご座、いっかくじゅう座、こいぬ座と移動していくこととなる。

ハートレイ彗星の位置。同星図は北が上に描かれているが、地面に立って空を見上げたときには、北が上になるとは限らないので注意が必要。また、彗星の位置は、0時の位置を示している(例えば10月19日深夜に観察する場合には、20日(0時)の位置を目安に探すこととなる)

国立天文台では、キャンペーン期間が比較的長いため、10月21日まで、同22日~10月31日まで、11月1日~同14日までの3つの期間に分けて、それぞれの観察に適した時間帯を説明している。

例えば、10月21日までであれば、真夜中前の早い時間帯にも、彗星を見ることができる。彗星は北東の空から上ってくるが、同期間の22時には、地平線から30度くらいの高さに上っているという。条件よく観察するためには、彗星が空高く上ってくる時間帯の方が良いことになるが、およそ真夜中の0時から明け方の4時頃まで、彗星は、ほぼ天頂付近に見ることができるとのこと。

また、条件良く観察するためのもう一つの条件として、月明かりの影響を受けないということもあるが、17日以降の時間帯では、月の沈む時刻が少しずつ遅くなり、明け方に近い時間帯となっていくため、月明かりをさけて観察するには、明け方近くの短い時間帯だけとなってしまうという。

予想される彗星の等級は、まだ明るくなりつつある頃で、5~7等級くらいと予想。10月21日頃になると、4~6等級と明るくなりそうだが、空の暗いところで観察する場合でも、双眼鏡や望遠鏡を使用した方が良さそうとしている。

なお、同彗星は、10月21日未明(20日の真夜中過ぎ)に地球に最接近(接近距離:約0.12天文単位=約1,800万km)。この前後数日で、見かけ上、彗星本体が最も大きく見えると予想されるとしている。

10月22日~10月31日については、彗星がさらに明るさを増し、4~6等級となることが予想されるものの、月と彗星の位置が近く、月明かりに照らされた明るい空でしか観察できなくなるため、観察条件の良い日がほとんどなく、特に28日前後は月と彗星が見かけ上接近し、彗星の観察はかなり難しいことが予想されるという。

なお、同彗星は、10月28日15時頃に太陽に最接近(近日点通過)(接近距離:約1.06天文単位=約1億6000万km)し、その前後で彗星活動が最も活発となり、彗星自体の明るさは最も明るくなるという。

11月1日~11月14日にかけては、月と彗星の位置が離れていき、再び月明かりの影響を受けずに観察できるようになり、11月2日頃になると月の出の時刻は十分遅くなり、彗星の高度が比較的高くなる0時頃から、月が地平線から上る3時頃まで、月明かりの影響なく観察することができるようになるという。

また、11月5日以降になると、月明かりの影響を受けずに観察できるようになり、彗星の地平線からの高度が高くなる1時頃から、空が白み始める明け方の5時頃まで、観察できるようになるという。

一般的な彗星は、地球からも太陽からも遠ざかると暗くなり始める時期を迎えるが、同彗星の場合、過去の観測から、太陽に最接近した後もしばらく明るくなる傾向がみられており、このため、この期間に、最接近時以上に明るくなると予想する人もいるとしており、予想通りとなれば、空の暗い場所ならば、肉眼でぼんやりとした彗星の姿が見える可能性もあるとするほか、秋も深まり、空も澄んでくる時期のため、都市近郊や市街地でも、双眼鏡を使えば、観察できる可能性もあるとしている。

なお、国立天文台のキャンペーンサイトでは、観察に必用な機材や彗星の見え方、見るためのコツなども示しているほか、観察報告を受け付けており、その観察集計結果も見ることが可能となっている。